中華まん「1日最大40万個生産」工場の驚きの内部。中村屋の中華まんが出来上がるまで…現場の改善活動も聞く
工場の5S活動では、実際の従業員の写真を使用した掲示が特徴的だという。「このエリアは私の担当ですので、5S進めましょう」などのメッセージを添えることで、親しみやすさと現場の一体感を生み出している。 また、5Sが定着するまでは外部のコンサルも活用している。現在は、年に1度の活動発表会や、定期的な事務局会議を開催し、進捗は従業員通路のボードで共有するなど、5S活動を日常業務に根付かせる工夫がなされている。
中華まんは、実は毎年規格の見直しが行われている。そのため、新規格品の生産を開始する際には、生地を目標値に仕上げるまでに多くの苦労を伴う。さらに、小麦粉のブレンドや品質も毎年変化するため、水分量や発酵・蒸し工程の条件を調整する必要がある。 これらの課題に対応するため、開発担当と工場担当が協力し、試作を繰り返して製造ラインへの落とし込みを行っている。 ■中華まんと聞くと冬の商品だが… ここでふと疑問に感じたことがある。中華まんと聞くと冬のイメージがあるが、閑散期の工場はどうなっているのだろうか。
「7~4月は、1日も休むことなく生産を行っていますが、それ以外の時期は設備メンテナンスや従業員教育などを実施しています。これまで毎年業者に依頼していた部品交換や修理も、少しずつ自社で対応を進めており、コスト削減やスキル向上につなげています」(谷本さん) さらに販売面でも新たな取り組みをしている。他工場で生産されているスーパーマーケット向けの日配品では、まとめて袋詰めされていた商品を個包装し、「ラップ不要で袋のままレンジで温められる手軽さ」を発信した結果、朝食として利用される割合が1.5倍に増加した。
これをきっかけに忙しい朝の需要に目を向け、中華まんを春夏にも販売するようにしたところ、3年間で出荷数量が大幅に増え、好評を得ているそうだ。 最後に今後の展望についても伺った。 「年間を通じて、中華まんをより身近な食として知っていただきたいと考えています。また、中華まんミュージアムを通じて、五感で中華まんの魅力を体験していただくことで、さらに多くの方にファンになっていただけると信じています」(中華まんスチーム企画部 石川敦之さん)
中華まんミュージアムは、単なる工場見学施設にとどまらず、中村屋の製造技術や新たな食シーンを生み出す事業戦略の重要な拠点であると感じた。 【そのほかの写真を見る】まるで中華まんが行進しているかのよう。中華まんが工場で製造されている様子をみてみよう
丹羽 桃子 :工場見学マニア・ライター