第93回選抜高校野球 東海大菅生、逆転8強 土壇場でサヨナラ /東京
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会第8日の27日、東海大菅生(あきる野市)は2回戦で京都国際(京都)に5-4で逆転サヨナラ勝ちし、初のベスト8に進出した。中盤に逆転されて2点を追う苦しい展開だったが、九回1点を返した後、2死満塁で代打の多井(おおい)耶雲(やくも)外野手(2年)が右翼に適時二塁打を放った。劇的な幕切れにスタンドの学校関係者は喜びに包まれた。28日の第4試合(午後4時半開始予定)で中京大中京(愛知)と4強をかけて戦う。雨天の場合は29日に順延となる。【林田奈々、面川美栄】 満塁ながら、敗戦まであと1アウトに追い込まれた場面。代打は「コツコツ練習してきた」(若林弘泰監督)という多井。鋭く振り抜いたバットが快音を響かせた。ライナーが右翼手の右を抜け、芝の上を転がっていく。三塁走者の堀町沖永(3年)に続いて鈴木悠平(2年)が本塁を駆け抜け、両手を大きく広げた次打者の本田峻也(3年)と抱き合った。グラウンドに選手たちが飛び出した。 サヨナラだ。スタンドで応援した多井の父昭人さん(46)は声を震わせて「こんなことってあるんですね。本当にうれしい」。硬式野球部員たちも高く掲げたメガホンをたたき合い、保護者は肩にかけたタオルで涙をぬぐった。マネジャーの石栗美結(みゆう)さん(3年)は「夏の西東京大会決勝のサヨナラ勝ちを思い出した。日本一しか目指していない。次も勝って」。 序盤は有利に試合を進めた。二回に小池祐吏(2年)、鈴木悠平の連打で好機を作って先制すると、三回も福原聖矢(2年)の2塁打を足がかりに加点した。しかし五回、初戦に続いて先発した鈴木泰成(2年)が相手打線に捕まり4点を失ってしまった。 「切り替えて。頑張って」。応援団のメガホンを打ち鳴らす音が強くなった。選手たちは守備から流れを取り戻す。六回から救援した松永大輝(3年)が粘り強い投球で3イニングを無失点で切り抜ける。九回は今大会初登板のエース・本田が走者を三塁まで進められながらもゼロに抑え、グラブをたたいてガッツポーズした。 最後の攻撃。「勝負根性を見せろ」。若林監督に送り出された先頭の主将、栄塁唯(3年)が右前に糸を引くような安打で出塁。父広三さん(56)は「見事」とうなった。千田光一郎(3年)らも続き、勝利を演出した。 ◇やっぱりみんなと ○…スタンドの部員たちはメガホンを打ち鳴らして勝利を喜んだ。清水一哉内野手(3年)は「2点差を逆転するなんてすごい。次も強い相手だが、勝つと信じている」とガッツポーズ。清水内野手ら自宅から通う部員16人は緊急事態宣言中、寮に入る部員と別メニュー。室内練習場や路上で練習し、意気が上がらないこともあったが「チーム全体がレベルアップしないと」と励まし合ったという。寮生とはセンバツのスタンドで合流。徐々に応援の呼吸も合って「やっぱりみんなでやるのは楽しい」。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇2点差、反撃の口火 東海大菅生・栄塁唯(るい)主将(3年) 「ここで終わるか」。2点を追う九回、気合を入れて先頭の打席に向かった。2球目を振り抜いた打球は勢いよく右前に抜け、反撃の口火を切った。 昨年秋の都大会は右肘のけがで出場できず、三塁コーチャーを務めた。「仲間に連れてきてもらった甲子園。今度は自分のプレーで助けたい」と話す。 その通りの積極的な姿勢と安定した小技を見せている。公式戦に復帰した1回戦の聖カタリナ戦(愛媛)で2番で先発。一回、敵失で塁に出ると盗塁を決めた。三回には中前打を放ち、続く千田光一郎(3年)の2ラン本塁打を呼んだ。京都国際戦の三回は犠打を決めて得点につなげた。 甲子園に立っても「緊張しなかった」というおおらかな性格。楽しんで野球をやってきて「なんでおれが主将なのか」と悩むこともあるという。でも、目標を聞かれれば必ず「一戦必勝で日本一」と答え、チームの先頭を走っている。【林田奈々】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦第2試合 京都国際 000040000=4 東海大菅生 011000003=5 〔多摩版〕