壮大なスケールのイベントはどんな経緯で実現したのか? 『BMW MOTORRAD G/S DAY'S 2024』の成り立ち
初心者が楽しめることを前提としたコース設定
実際にG/Sデイズに参加して、あまりの絶妙さに感心したのは、オフロードの腕前が万年初級から中級の私でも、未舗装路が満喫できたコース設定です。もっとも、ゲレンデクルーズには上級者向けのコースが存在するのですが、コマ図ツーリングで走るオフロードは初心者+フラットツインGSでも何とかなるレベルでした。
「G/Sデイズに限った話ではないですが、インターナショナルGSトロフィーの選考会を除くBMWモトラッドのライディング系イベントは、初心者が楽しめることを前提にしています。そしてコース設定を行なう上で重要な役割を果たしてくれるのが、全国のBMWモトラッドディーラーの皆さん、G/Sデイズの場合は首都圏ディーラーの皆さんです。私を含めた事務局の人間だけではなく、ディーラーのスタッフが普段から周辺の林道を熱心に走り回って、情報を更新してくれるから、誰もが楽しめるコースが設定できるんです。もちろん検討の結果、難易度が高くて落選した林道もたくさんありますよ」 ディーラーのスタッフと言えば、私が興味深かったのは、各ディーラーが参加者=自身の店舗のお客さんをフォローする態勢がきっちり出来上がっていることです。 「そもそもG/Sデイズは、首都圏ディーラーが主催者ですからね。お客さんにどうやって楽しんでもらうか、お客さんにどうやってマナーを守ってもらうかを(ゲレンデや林道をできるだけ荒らさないという意識を全員が共有)、全店のスタッフが真剣に考えているんです。逆にそういう態勢が存在しない状況で、約200台のGSが好き勝手に走ったら、このイベントは成立しないでしょう」
BMWモトラッドならではのイベント
G/Sデイズの魅力に大いに感心した私は、2輪メディアに携わる人間として、他メーカーのアドベンチャーツアラーやトレールバイクでも、こういうイベントができないものか……と感じました。とはいえ齋藤さんの話を聞いていると、なかなか難しいのかもしれません。
「他メーカーでの開催については断言できないですが、ディーラーさんの真摯な姿勢に加えて、車両の柔軟な特性や頑丈さを考えると、このイベントはGSシリーズだから、BMWモトラッドだから実現できるような気がします。もちろん私の中にも、BMWモトラッドだから……という気持ちはありますよ。1990年代以降の私は、BMWモトラッドにいろいろな楽しい思いをさせてもらい、いろいろな勉強をさせてもらったわけですから、1人でも多くのライダーにBMWモトラッドならではの魅力を実感してもらうことは、私の使命だと思っています」
中村友彦