壮大なスケールのイベントはどんな経緯で実現したのか? 『BMW MOTORRAD G/S DAY'S 2024』の成り立ち
見方によっては、荒唐無稽な話!?
「走らせてくれて、ありがとう……」2024年10月5日・6日に長野県の志賀高原を舞台に開催された「BMW MOTORRAD G/S DAY’S」(以下、G/Sデイズ)に、「R 1300GS GS スポーツ」を駆って体験取材という形で参加した私(筆者:中村友彦)は、しみじみそう感じました。何と言ってもこのイベントでは、一般的なバイクライフでは考えられない、スキー場のゲレンデや、志賀高原周辺に点在する数多くの未舗装林道を、思いっ切り堪能できたのですから。 【画像】いかにして実現できたのか? イベントの模様を画像で見る(11枚)
しかも、ゲレンデクルーズとコマ図ツーリングで走る一部のルートは、上信越国立公園内なのです。環境保護を前提にして国が管理する公園の敷地内を約200台のバイクが走るというのは、見方によっては荒唐無稽な話で、実現するまでには問題が山積みだったはずです。 このイベントはどんな経緯で開催されたのか……? その理由が知りたくなった私は、事務局の代表を務める齋藤栄治さんに話を聞いてみることにしました。
国立公園ならではの苦労
最初に大前提の話をしておくと、齋藤さんは多種多様なイベントの運営や広告などを手がける会社の代表で、2000年以降に開催されたBMWモトラッドのイベントでは、事務局の中心的な役割を何度も担当しています。
ちなみに、以前よりご本人の名前だけは知っていた私にとって、齋藤さんはサーキットにおける活躍が印象深いのですが(1990年代は「R 100 GS」ベースのマシンでいろいろなイベントレースに参戦。2006年には「K 1200 R」で鈴鹿8耐クラス優勝を飾り、2008年には「HP2スポルト」でもて耐総合優勝を達成)、その一方で2005年には、オフロードのスキルが必要なBMWモトラッド・ライダートレーニング公認インストラクターの資格を取得しています。 そんな齋藤さんへの最初の質問は、「GSチャンレンジ」や「GSキャンプミーティング」を引き継ぐ形で、2021年から始まったG/Sデイズで、志賀高原をその舞台として選択し、コースにスキー場のゲレンデを取り入れた理由です(会場を福島県から長野県の志賀高原に変更したのは2020年から)。 「ゲレンデ走行は過去に福島県でのBMWモトラッドのイベントで行なったことがあって、その時点でかなりの好感触を得ていましたし、エンデューロやトライアルではゲレンデを使うことが珍しくないんです。志賀高原を選んだ理由は、複数のスキー場を繋ぐ形で、縦横無尽に走れるからですね。2019年末にスキーで全山を回ってリサーチを行ない、2020年春に試験的にGSで走らせてもらったところ、とにかく景観のスケールが圧倒的で楽しくて、ここでGSのイベントをやってみたい!! と思いました」 そう語る齋藤さんではあるけれど、前述したように志賀高原は上信越国立公園内です。ゲレンデ走行の許可を得るには相当な苦労があったのではないでしょうか。 「まずは役場、続いて地権者団体や旅館組合の皆さんとじっくり話をして合意を得たうえで、環境省の許可を取りました。そのあたりは想定内だったのですが、コースを示す看板やパイロンなどを設置する前に、寸法や容積を書面で提示しなくてはならないこと、イベント開催前と開催後にコースのいろいろなところの路面状況を示す写真が必要なことは、国立公園ならではかもしれません。まあでも、参加者の皆さんに楽しんでもらえることや、地権者団体や旅館組合の皆さんに大歓迎してもらえることを考えれば、苦労という感覚は無いですよ(笑)」 「来年以降は環境省の指導のもと、国立公園内でバイクイベントを行なう意義や大義を改めて見直し、旅館組合さんと共同で木道の整備や環境修繕といった活動を行なう予定です。この活動は事務局とディーラーのスタッフ、そして参加者の皆さんで行ないたいと考えています」