いよいよ新たな「アベンジャーズ」が始動か!?2025年のMCUに期待できる理由とは?
2024年はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にとって雌伏の時期だったと言えるだろう。ドラマシリーズは「エコー」と「アガサ・オール・アロング」が配信されたが、エピソード的には「アベンジャーズ」に直接絡むものではなかった。劇場公開作品も『デッドプール&ウルヴァリン』の1本のみ。デッドプール(ライアン・レイノルズ)とウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)という2大ヒーローは、今後の「アベンジャーズ」にも大きく絡んでくる可能性が高いが、こちらもエピソード的にはアベンジャーズ再始動につながるものではなかった。 【写真を見る】『エアフォース・ワン』に続いて「キャプテン・アメリカ」最新作でもアメリカ合衆国大統領を演じるハリソン・フォード 近年のMCUの動きを改めて振り返ってみれば、『マーベルズ』(23)以降、アベンジャーズに直接絡む主軸の物語は動いておらず、「次なる展開」をずっと待たされ続けているというMCUファンも多いだろう。しかし、2025年はそんな思いを払拭させてくれる1年となりそうだ。 ■反ヒーローだったサディアス・ロスがアメリカ合衆国大統領に就任する『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』 その先陣を切ることになるのが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(2月14日公開)。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)以来となる、「キャプテン・アメリカ」がタイトルに付くシリーズ4作目となり、主人公が先代のキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)から、彼の相棒だったファルコン/サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)にバトンタッチされ、まさに大きな仕切り直しの1作となっている。ドラマシリーズ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」から続く物語でもある本作は、サムが本格的にキャプテン・アメリカとして活動し始める位置付けにあり、止まっていたアベンジャーズの再始動に向けた第一歩となることは間違いないだろう。 また、劇中で描かれるアメリカという国家の大きな変化にも注目したい。サディアス・E・“サンダーボルト”・ロスが、新たなアメリカ合衆国大統領となっている。サディアス・ロスといえば、ハルクの誕生譚『インクレディブル・ハルク』(08)で、第二次世界大戦にキャプテン・アメリカを生みだした超人血清を復活させるスーパーソルジャー計画を再開させたアメリカ陸軍大将として登場し、その実験失敗でハルク化したブルース・バナー(エドワード・ノートン/『アベンジャーズ』以降はマーク・ラファロが演じる)を執拗に追いかけた人物だ。その後も『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、アメリカ国務長官としてヒーローたちを政府が管理するソコヴィア協定を主導するなど、ヒーローに友好的な感情を持っていない。この2作をはじめこれまでは名優ウィリアム・ハートが演じてきたが2022年に逝去したこと受けて、最新作からはハリソン・フォードに引き継がれることとなった。そして、そんな反ヒーローな視点を持つ人物が大統領となり、さらにはレッド・ハルクに変身することも明らかになっている。 スティーブから引き継いだサムが、葛藤しながらも“正義の象徴”であるキャプテン・アメリカとして、新たなアメリカとどのように対峙するのか?物語の詳細が明かされていない現段階においても、すでに重厚さと不穏さを感じさせる。本作の副題「ブレイブ・ニュー・ワールド」は、イギリスの小説家オルダス・ハクスリーが書いた、優性主義的管理社会を描いた古典ディストピア小説「すばらしい新世界」の原題と同じである。この強いインパクトを持つ意味深な副題も含めて、社会派なMCUの物語を期待せずにはいられない。次世代アベンジャーズの中心になるであろう新生キャプテン・アメリカのデビューも含め、MCUの仕切り直しにふさわしいハードな1作になるに違いない。 ■アンチヒーローたちが政府直属部隊を結成する『サンダーボルツ*』 ゴールデンウィークシーズンには、ヒーローたちと因縁浅からぬ関係で関わってきたアンチヒーローたちが集結する『サンダーボルツ*』も公開となる。メンバーは、スティーブの元相棒であるウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)に、『ブラック・ウィドウ』(21)に登場したブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)の義妹エレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)、『アントマン&ワスプ』(18)のヴィランで物質をすり抜ける能力を持つゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)、「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で政府から2代目キャプテン・アメリカを襲名しながら問題行動を起こしたジョン・ウォーカーことU.S.エージェント(ワイアット・ラッセル)、ソ連が生みだした超人兵士であり、ナターシャとエレーナの父親的な存在であるレッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)、ナターシャたちと敵対した悲劇的な背景を持つ刺客タスクマスター(オルガ・キュリレンコ)といった面々。ヒーローの協力者や敵だった者たちで構成され、政府直属の部隊「サンダーボルツ*」として動きだす。 クセ者ぞろいで万全のチームワークを持っているとは思えない彼らが挑むミッションの全容は不明だが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で描かれる社会情勢とも関連するであろう物語と、アベンジャーズの一員として活躍してきたバッキーや姉ナターシャの意志を継いだエレーナの立ち位置も踏まえると、このチームの今後のMCUにおける存在は無視できない。 ■マーベル・コミックスヒーローの元祖がついにMCUに参戦する『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』 さらに、『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ(原題)』(7月25日米公開)というビッグタイトルも。マーベル・コミックスヒーローの元祖とも言える存在で、これまでも幾度か映画化されてきたヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」が、ついにMCUに合流することになる。リーダーのミスター・ファンタスティックを「マンダロリアン」のペドロ・パスカルが演じるほか、インビジブル・ウーマンを「ミッション:インポッシブル」シリーズのヴァネッサ・カービー、かつてクリス・エヴァンスも演じたヒューマン・トーチを「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のジョセフ・クイン、ザ・シングをドラマシリーズ「パニッシャー」にも出演したエボン・モス=バックラックが演じる。 特筆すべきは、「ファンタスティック・フォー」の宿敵として有名なヴィラン、ドクター・ドゥームについて。昨年7月に行われたサンディエゴ・コミコン・インターナショナル2024にて、2026年のアメリカ公開が予定されている『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』にかつてアイアンマン/トニー・スタークを演じたロバート・ダウニー・Jrが、このドクター・ドゥーム役でMCUに復帰することが発表されたからだ。 ドクター・ドゥームといえば、マーベル・コミックスにおいてサノスに匹敵する大物ヴィランとして知られている。これまでの「ファンタスティック・フォー」の実写映画では、その存在感や強さを表現しきることができなかった印象があるが、原作では国民に支持される一国の国王であり、天才科学者にして魔術にも通じるという人物。たゆまぬ努力によってテクノロジーと魔術の両方を操り、さらに王族としての高潔な魂も持っている。例えるなら、トニーやブルース以上の頭脳とドクター・ストレンジに匹敵する魔術に精通しているという強者なのだ。 はたしてMCUでどこまで描かれるかわからないが、満を持してのドクター・ドゥームの参戦に際しては、ダウニー・Jrが演じることも含めて、想像以上の活躍を見せてくれるのは間違いなく、『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』に絡んでくるかも気になるところ。そして、『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』では「ドゥーム」の副題どおり、ファンタスティック・フォーの敵としてだけでなく、MCUのヒーロー全体における敵対者として描かれることになると思われる。 今後のMCUを担うヒーローとチーム、そして強大なヴィランがまとめて登場することになる2025年。雌伏の時を乗り越え、さらに大きく進化していくシリーズを楽しむことができそうだ。 文/石井誠