全長37m、体重57t…地球史上最大級の恐竜パタゴティタンの魅力
巨大恐竜・パタゴティタンをはじめとする数々の生物の標本展示とともに、恐竜の巨大化の謎に迫る展覧会が、今夏、横浜で開催されている。本展の監修者である古生物学者の関谷透に、巨大恐竜の魅力を訊いた。 【画像を見る】プテラノドンからパタゴディタンまで、『巨大恐竜展 2024』に展示されている恐竜たち
ロンドンから日本初上陸! 巨大恐竜を目にできる展示内容
人々が恐竜に惹かれる理由のひとつ。それは、他の生物を圧倒する巨体にある。そんな巨大恐竜の魅力を味わえるのが、パシフィコ横浜で現在開催中の展覧会『巨大恐竜展 2024』だ。 本展の中心となるのは、ロンドン自然史博物館で行われた企画展の巡回展。今年1月のロンドンでの閉幕時には同博物館で史上最多の来場者数を記録した。 恐竜をはじめとする巨大生物の標本が数多く展示される中、注目は日本初上陸を果たしたパタゴティタン・マヨルム。この史上最大級の竜脚類は、全長37m、体重は57tで、アフリカゾウ9頭分より重いという驚異的な大きさを誇る。本展覧会の監修者であり、福井県立恐竜博物館の関谷透主任研究員に、その魅力を訊いた。 「パタゴティタンの魅力は、なんといってもその巨大さです。これだけ大きな恐竜の標本は、大半の人は目の当たりにしたことがないはず。この圧倒的な大きさを目の前で体感する喜びを、ぜひみなさんに味わってほしいです」 そんな本展でフォーカスされるテーマは、「なぜ恐竜は巨大化したのか」。地球史上、恐竜ほど巨大化した動物は未だ存在しない。果たして、その理由とは? 「巨大化はさまざまな動物に起こる現象ですが、そこにはいくつもの要因が存在します。体を大きくすれば敵に負けない強い力を持つため、生存競争では非常に有利になる。これも、生物巨大化の理由のひとつと考えられています」 パタゴティタンを筆頭とする竜脚類が巨大化していく上で、重要な要素となったのが食事のスタイルだ。体を大きくするには食料補給が欠かせないため、パタゴティタンも、1日に約130㎏の餌を摂取したと考えられている。 「より短時間でより多くの栄養を取るためなのか、食べ物は咀嚼せずに丸飲みするのが竜脚類の食事の特徴です。食べ物をかみ砕く必要がなければ、短時間で大量の食事ができる。また、頭は軽くて小さくなります。頭が軽ければ、支える首も細くて長い形状へと進化できます。結果、広範囲の食物を摂取できたことも、巨大化を促進したと考えています」 せっかく大量の食べ物を取っても、消化吸収できなければ意味がない。だが、取り込んだ栄養を効率的にエネルギーに変える仕組みも恐竜たちは兼ね備えていた。 「哺乳類の肺では、空気の取り込みと排出が同じ経路で行われます。でも竜脚類の肺は、気嚢と呼ばれる袋も使うことで一方通行で空気を流す仕組みになっています。この場合、肺の中で新鮮な空気と汚れた空気が混ざり合わないため、効率よく体内に酸素を行き渡らせ、食物をエネルギーに変えることができるのです。ただ、ここで謎もあります。丸飲みする食事のスタイルや肺構造は、現代の鳥にも共通する特徴です。本来なら鳥も巨大化していいはずなのに、竜脚類に匹敵するほど大きな鳥は誕生していません」 なお、今回の展覧会では、福井県立恐竜博物館や福井県立大学恐竜学研究所の監修のもと、竜脚類以外の大型恐竜や大型動物も含めた標本が合計約100点展示されている。鎧竜のデンバーサウルスといった竜脚類以外の恐竜に加えて、翼竜のプテラノドンやマンモス、魚竜などの絶滅動物、ナガスクジラなどの現代の哺乳類の巨大化についても検証していく。 「標本だけではなく、恐竜ロボットやインタラクティブな展示を通じて生態を学べるなど、大人も子どもも楽しめる内容を意識しています。また、地球から失われた動物である恐竜を多角的に知ることで、生物多様性の価値が見えてくるはず。展示を通じて、少しでも多くの人がその大切さを感じてくれたらうれしいです」 恐竜王国・福井からも、プテラノドンなどのさまざまな巨大標本が集結している。
文:藤村はるな