【このニュースって何?】年金制度改正の議論始まる → 年金って何
《日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます》
来年予定される年金制度改正に向けた政府の議論が始まりました。厚生労働省は審議会に対して、国民年金の支払期間の5年間延長案などを示しました。年金制度は人口構成や経済状況によって定期的に見直すことになっており、今回はどんな制度改正になるのか、注目されます。 年金は、おもに高齢になった時に受け取るお金です。そのお金は生きている限り受け取ることができます。貯金が尽きるのを心配したり家族に負担をかけることを気に病んだりしなくてすむため、心安らかな老後が期待できる制度です。 ただ、制度が複雑で難しいことや若い人にとっては「自分事」と思いにくいことなどから、多くの人に十分に理解されていないように感じます。今回は年金制度について知っておきたいことを四つのキーワードにまとめて説明しようと思います。 一つ目は、「私的扶養と社会的扶養」です。私的扶養とは、高齢者の面倒を家族や親族でみていた昔の扶養の形です。昔の日本は大家族で、同じ地域に親族が固まって暮らしているのが普通でした。働けなくなった高齢者の面倒もそうした家族や親族の中でみてきました。 ただ、社会が発達すると、都会に出る若者が増えて大家族が崩れたり、平均寿命が延びたりして、私的扶養に頼ることが限界になってきます。そうすると社会全体で高齢者を支える仕組みが必要になります。この形が社会的扶養で、金銭面では年金制度ということになります。 日本で本格的な年金制度ができたのは、太平洋戦争開戦直前の1941年です。労働者年金保険法が公布され、工場などで働く男子労働者を被保険者として老後に年金を受け取る制度ができました。戦争のために軍需工場や鉱山などで働く労働者を確保する必要があってできたとみられています。戦後になると、年金制度の対象範囲が広がり、金額も増え、高齢者の社会的扶養の形が充実してきました。 二つ目のキーワードは「公的年金と私的年金」です。公的年金は、法律に基づいて国がおこなう年金のことです。公的年金には現在、国民年金(基礎年金)と厚生年金の二つがあります。 国民年金は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全員が加入することになっている年金です。すべての年金のベースになっているので基礎年金ともよばれます。原資は加入者が払う年金保険料と国庫負担(税金)と積立金です。受け取りは原則65歳からです。自営業者が受け取れる公的年金は、国民年金だけです。 厚生年金は会社に勤めている人や公務員が受け取ることができる年金です。国民年金に上乗せされて支給される年金のため、2階建て部分とよばれます。厚生年金の保険料は加入者と会社などが折半して払います。会社や役所に勤めている人なら最長70歳まで保険料を払います。受け取りは原則として65歳からです。 公的年金とは別に私的年金があります。国が運営していない年金です。企業年金や個人年金とよばれる年金が私的年金にあたります。企業年金は、給料や退職金の一部などを基金が運用して退職者の老後資金として払うもので、3階建て部分とよばれます。また、個人年金は個人が金融機関などに積み立てて老後に分割して受け取る年金です。これらの私的年金の加入は個人の自由です。