一人でも戻ってきて 能登半島地震1年、氷見・姿地区
●残った人も離れた人も 寺に集い絆かみしめ 能登半島地震による多大な被害を受けた氷見市姿地区の本願寺派長福寺で1日の年明けと同時に営まれた法要には、集落に残った人も離れた人も集った。「一人でも戻ってきて」。例年数人だった参加者は今年、十数人を数えた。姿の住民は復興に向け、集落の絆をかみしめ、新たな一歩を踏み出した。 「本当に寂しかった。ここに来たらつながりがある」。こう話す富田右子(ゆうこ)さん(73)は自宅が半壊し、家族3人で昨年12月に引っ越しした氷見市南部の新居から駆け付けた。約1年ぶりに再会した住民もいた。「寺があるから戻ってこられる。離れていても守りたい」と力強く語った。 姿地区は氷見市北部の石川県境近くの山あいにある。地震で家屋やインフラに被害が生じ、57世帯のうち16世帯が集落を離れた。 半壊した自宅の修理が昨夏に終わった花木幸治さん(50)は、「人がこれ以上減っては大変だ」と家の周りに空き地が増えているのを心配する。妻の策子(のりこ)さん(50)も「一人でも多く戻って来てもらいたい」と願った。 長福寺は、地震によって本堂の内壁が崩れ、鐘楼堂が傾き、昨年11月にようやく修復を終えた。寺は法要「修正会(しゅしょうえ)」を、集落の絆を紡ぐ場として住民に参列を呼び掛けた。少しでも明るい気持ちになってもらおうと、鐘楼堂をライトアップしたり、スープを振る舞ったりした。 北鹿渡文照(ふみてる)住職(77)は「希望は前を向いた時に胸に差し込んでくる。皆さんと手を取り合って集落を盛り上げたい」と呼び掛けた。門徒総代の山本譲治区長(65)は集落のみんなに届けとばかり、力強く鐘を突いた。山本さんは「住民の声を聞き、行政にしっかりと集落の課題を伝える」と気を引き締めた。