ライバルはBMWやアウディ! ニオEL8へ試乗 航続距離は充分 653psでも足が柔らかすぎる?
過剰なほどのパワー 柔らかすぎる足まわり
それでは公道へ出てみよう。EL8はツインモーターの四輪駆動。前はAC永久磁石ユニット、後ろがAC誘導ユニットと異なる仕様で、個別に制御し電費を高める狙いがある。 システム総合の最高出力は653ps、最大トルクは86.5kg-mと、かなりのもの。車重は2558kgと重いが、0-100km/h加速を4.1秒で処理してみせる。パワーデリバリーは淡白で、ファミリーSUVとして過剰なほど力強い。 複数のドライブモードがあり、コンフォート・モード時はだいぶパワーが絞られる。実際、少し鈍く感じてしまう。スポーツ+へ切り替えると、ボッシュ社製の強力なブレーキが控えているが、不安になるほど速い。 サスペンションは、不自然なほど柔らかい。乗り心地を重視したのかもしれないが、気持ちが悪くなる人もいるだろう。まるで、海に浮かぶ小舟のよう。筆者は稀にクルマ酔いするのだが、珍しく運転中でも気持ち悪くなった。 構成自体は高度で、ツインチャンバーのエアスプリングとアダプティブダンパーが前後に組まれている。シトロエンのように、フルバンプ時の衝撃を和らげるため、油圧バンプストッパーも装備する。 ところがコンフォート・モード時は、前後左右にボディが揺れて安定しない。路面の凹凸を通過したり、カーブを旋回するだけで、フラットに戻るまで時間を要する。ステアリングホイールは軽すぎ、直進を維持するのにも気を使う。 スポーツ+モードでは若干引き締まるものの、現代の水準ではまだソフト。ステアリングは、適度に重くなるけれど。
実際の航続は480km 総合的な実力では及ばない
駆動用バッテリーの容量は、小さい方が73.5kWhで、航続距離は389km。大きい方は90.0kWhで、510kmが主張される。今回の試乗車は後者で、交通量の少ない早朝に運転して、480km近く走ることができた。 ニオは、駆動用バッテリーの交換ステーションで、充電済みユニットと交換できることを特長としている。現在の欧州では、5か国に計56か所が展開されている。ただし、バッテリーを含まない車両を購入し、バッテリーのレンタル料金を支払うことになる。 英国価格は未定。ドイツの価格を換算すると、駆動用バッテリー込みのロングレンジ・エグゼクティブでは、約9万1500ポンド(約1775万円)相当になる。 スッキリ整ったスタイリングで、上質なインテリアを包んだEL8。しかし柔らかすぎるサスペンションが、乗り心地や操縦性の足を引っ張っている。最も引き締まるスポーツ+モードでも、プレミアムSUVに期待される落ち着きや身のこなしは得られない。 航続距離は充分。動力性能は高い。しかし、欧州ブランドの同価格帯のライバルへ、総合的な実力では及ばないことは否めない。見た目はレンジローバー・スポーツに似ていても、運転体験は大きく異なる。 ◯:上質なインテリア スポーツ+モード時の圧倒的パワー 航続距離 △:ソフトすぎる乗り心地 軽すぎるステアリング 高くはない実用性
ニオEL8 ロングレンジ・エグゼクティブ(欧州仕様)のスペック
英国価格:約9万1500ポンド(約1775万円/予想) 全長:5099mm 全幅:1989mm 全高:1750mm 最高速度:199km/h 0-100km/h加速:4.1秒 航続距離:487-510km 電費:4.5-4.6km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2558kg パワートレイン:AC永久磁石モーター(前)+AC誘導モーター(後) 駆動用バッテリー:90.0kWh 急速充電能力:-kW 最高出力:653ps(システム総合) 最大トルク:86.5kg-m(システム総合) ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
マーク・ティショー(執筆) 中嶋健治(翻訳)