冷静で熱い市和歌山「米田劇場」 人生初のサヨナラ打 センバツ
第94回選抜高校野球大会は第8日の27日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2回戦があり、2年連続8回目出場の市和歌山が昨秋の関東大会王者の明秀日立(茨城)に2―1でサヨナラ勝ちし、3年ぶりとなる8強入りを果たした。 【市和歌山vs明秀日立 熱戦を写真で】 高々と上がった打球が右中間を破るのを確認し、市和歌山の米田は右手を突き上げて感情を爆発させた。「何を打ったのかもわからなかった」。クレバーだったマウンドさばきとは打って変わって、一心不乱、無我夢中で放った人生初のサヨナラ打だ。 1―1の九回1死一、二塁。打席に入る直前、半田監督から伝令が送られた。「良いゲームをしてきたんだからお前が決めろ」。米田は「積極的に振る」ことだけを誓って右打席に入ると、明秀日立の右腕・猪俣のフォークボールをコンパクトに振り抜いた。打球は前進守備を敷いていた相手外野陣を軽々と越えた。「今まで耐えてきたのが報われた」と米田。141球の熱投にサヨナラ二塁打。そしてこれが今大会8打席目にして初安打。捕手の松村も思わず「やっぱり米田、持ってるな」。まさに「米田劇場」だった。 投球は冷静沈着だった。初戦の花巻東(岩手)戦は直球で押しただけに、この日の相手打線は「直球に合わしてくる」と読んだ。直球のキレも本調子ではなかったため、速めの変化球であるツーシームとカットボールを多投し、直球狙いの打者のバットの芯を外すことを心がけた。先制され、なおも六回2死一、二塁のピンチではツーシームで注文通りの三ゴロ。9安打を浴びながらも要所を締めた。 冷静に熱く、投打で躍動し、1学年上の憧れである小園健太(DeNA)とともに戦った前回大会を超える8強進出を成し遂げた。「エースとしてここから全イニング無失点でいきたい」と米田。「持ってる」男が、昨秋の明治神宮大会の王者・大阪桐蔭に真っ向勝負を挑む。【大東祐紀】