銀行員から「相続対策」で「不動産活用」が勧められるワケ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
地主の相続対策として、銀行から不動産の取得を提案されることがしばしばあります。一体なぜなのでしょうか。本記事では、相続対策としての不動産活用の有効性について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。 【早見表】3,000万円30年返済の住宅ローン…金利差による利息分
不動産を活用した相続対策
相続対策の検討を行う場合においては、銀行や税理士、コンサルティング会社などから不動産について提案を受けることがほとんどであろう。その内容としては不動産の購入、未利用地に建物を建設する不動産有効活用である。 なぜ「相続対策=不動産」なのか。結論からいえば不動産の取得(この場合には有効活用も含む)によって、「相続税の課税資産を減らすことができること」にある。 数字を使って検証を行う。不動産を追加で取得する前における個人の貸借対照表(B/S)が以下のとおり(図表1)であるとする。 当該個人の純資産は200(現預金100+既存不動産100=資産200)である。 相続が発生した際には当該200に対して非課税財産、葬式費用、借入(債務)を控除し、さらに家族構成に応じた基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を減らした課税資産に対して相続税が決定される。 ここで、不動産を追加取得するとどうだろうか(図表2)。 このケースでは相続対策のため、売買価格100の不動産を全額借入して購入する。相続税の計算における不動産の計算は相続税路線価や固定資産税評価額によって決定される。 さらに不動産はその利用方法(自用か賃貸か)や土地の形状、道路への接道如何などによって計算し、当該調整を経て最終的に決定される。一般的には、賃貸用不動産として利用していれば時価の30%~60%の水準(後述)となることから、検証にあたっては不動産の相続税評価は50として考える。 当初、純資産は200であったことに対して、不動産の取得により150まで圧縮されている。たとえば、所有する現預金を(生命保険を除く)ほかの金融商品に置き換えたとしても、多少の値上がり値下がりにより変動はあるものの、不動産ほどのインパクトはない。 なお、生命保険については受取人の要件などあるものの「500万円×法定相続人数」は非課税になることから、納税資金の確保としてよく利用される。
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