朝ドラ『ブギウギ』趣里×水上恒司が表現する恋の尊さ 告白シーンに詰まった2人の愛
スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)のうわさは業界の中でも広まっていた。“スウィングの女王”と“村山興業の御曹司”の交際は世間からしても大きなニュースではあるが、今は学徒出陣によりそれどころではない。年の差に悩むスズ子と同級生たちへの罪悪感に悩む愛助。『ブギウギ』(NHK総合)第57話では、ついにスズ子と愛助が結ばれる。 久しぶりに善一(草彅剛)と麻里(市川実和子)のもとを訪れたスズ子だったが、何やら2人の様子がいつもとは違っていた。顔を見合わせながらニタニタしている2人はスズ子が愛助と恋愛のさなかにあることを知っていたのだ。スズ子は2人に愛助が恋愛に踏み出せないでいることを相談すると、麻里は「今はその方のお答えを待つしかないわね」と優しく寄り添う。 【写真】愛助(水上恒司)を睨みつける小夜(富田望生) だが、スズ子にとって待ちの恋愛をするのは初めてのこと。どう振る舞えばいいのか、どこまで踏み込むべきなのか……恋愛には常に悩みが絶えない。「結構辛いですね」と本音を漏らしたスズ子に対して、麻里の「恋は辛いものよ。自分と同じくらい大切な人ができるってことなんだもの」という言葉が胸にしみた。こういうときは麻里のように優しく肯定してくれる存在が何よりも心を軽くしてくれる。 そしてあれだけ愛助との交際を反対していた小夜(富田望生)も「オレ、もう認める」と言い出す。小夜が愛助に悪態をついてきたのも、全てはスズ子のためを思ってのこと。だからこそ、愛助のことで浮かない顔をしているスズ子を見ていられなかった。誰もが自分のことで精一杯な時代の中で、スズ子のためを思って行動してくれる人が周りにいるのは貴重である。それはひとえにスズ子の人間性にほかならない。 前回のラストで村山興業の社長で母親でもある村山トミ(小雪)から愛助のもとに手紙が届けられた。このタイミングでの手紙ということは、きっとスズ子と愛助の関係に対する警告ではないかと捉えることもできるが、実際はまるで違った。村山興業の東京支社では愛助が坂口(黒田有)と面会し、「僕は福来さんと交際するで」と告げる。その決断を後押ししてくれたのがトミの手紙だった。トミの「あんたにはあんたのやり方でお国のためにできることが必ずやあると母は思うてます。劣等感を抱く必要はありまへん」という言葉は愛助の背中をそっと押してくれていた。 翌日、スズ子は「福来スズ子とその楽団」の事務所で次の巡業に向けて準備を進めていると、突然愛助がやってくる。「今はこんな、親に頼ったへなちょこでっけど……僕はこの先必ず福来さんにふさわしい男になります! なってみせます! せやから僕と交際してください!」と改めて告白する。スズ子もずっと愛助のことを考えていたことを明かし、「やっぱりワテは村山さんが好きだす」とお互いに頭を下げた。すると、その状況をこっそり見ていた楽団のメンバーが音楽で2人を祝福した。 戦況が悪くなっていく中だからこそ、より恋の尊さを感じられた回だった。スズ子と愛助はこの状況下で愛を育んでいくことができるのだろうか。どうか最後まで笑っていてほしい。
川崎龍也