「低所得者なのにディズニーに行こうとするなんて…」いつから夢の国は「格差社会の象徴」になったのか
◆「有料ファストパス」が好調で過去最高益に
2023年度、ディズニーリゾートには約2750万人が来場。2024年3月期の連結営業利益は、前期比で32%増の1467億円となり過去最高益になった。その理由は、追加でお金を払うことでアトラクションに優先的に入場できる「ディズニー・プレミアアクセス」(“有料ファストパス”とも呼ばれる)が好評で、さらにインバウンド客も多かったからだ。 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドも、コロナ禍で激減した収益を取り戻すべく、コロナ禍以後は富裕層やインバウンドを狙って収益を増やしたい意図が見える。ただこれは、企業としては当たり前のことをしているだけで、そもそも運営会社のオリエンタルランドが弱体化すれば、サービスが評価されているディズニーリゾートの質自体に影響を及ぼす可能性がある。
◆東京ディズニーリゾートは、世界で唯一の運営方法
世界ではディズニーランドが6カ所(カリフォルニア州、フロリダ州、パリ、香港、上海)でオープンしているが、実は東京ディズニーリゾートは、世界で唯一、ディズニーとライセンス契約をしているだけで出資は受けず、運営はディズニー社から独立して行っている。 オリエンタルランドの元関係者は、本部のディズニー社が「特別に高いクオリティと集客を維持している日本にだけは口を出すつもりもないのです」という。外資にありがちな本社のトップダウンで方針がコロコロ変わることはなく、世界でも特別の価値を提供している東京ディズニーリゾートは「年間パスで来てもらうより、誕生日など特別な機会に来園してもらえばいい。それがさらに特別な体験になる。その価値にお金を出せる人たちに向けたサービスという色合いが濃くなっていくでしょう」とも語った。 さらに日本は、今後ますます少子化が進む。また現在、実質賃金(物価の影響を考慮した働き手1人あたりの賃金)が25カ月連続で減少を続けている。「今後、ディズニーランドに気楽に遊びに行ける人は減ると見られている。それを見越せば、高い入場料を払ってもらって高い価値を提供する方向にシフトしていくのは仕方がない」とも、この元関係者は指摘する。 入場料に加えて、追加でお金を払って優先的にアトラクションを楽しめるプレミアチケットも、「ディズニー格差」を象徴しているといえよう。