【これが墓地の主流に?】急増する樹木葬は本当に環境に良いのか?“自然循環”への理想と現場の実態の乖離
近頃、やたらと葬儀や墓地の広告が増えた気がする。さらに「終活」支援ビジネスも盛んなようだ。高齢化社会で死者も増えたため、葬儀や墓の需要も高まったのだろうか。 【画像】【これが墓地の主流に?】急増する樹木葬は本当に環境に良いのか?“自然循環”への理想と現場の実態の乖離 とくに墓地の案内の中で目が止まるのは、樹木葬である。墓標を一般的な石ではなく、樹木にしたものだ。既存の墓地の一角に樹木葬スペースを設けるところも増えてきた。「豊かな自然の中に眠る」「花々と緑豊かな環境」などを売り物にしている。樹木葬と呼ばず、桜葬、樹林墓地など別の名で展開しているところも少なくない。 実際に人気らしく、新規墓地契約者数は樹木葬が半数を占めたという霊園業界の統計もある。もはや樹木葬は、墓地の主流になりつつあるのだろう。 そんな業界の裏事情をかいま見たい。同時に世界的な葬儀や墓地の潮流についても目を向けると、墓地と環境、そして人々の意識の変化が浮かび上がってくる。
時代の流れによって変わる葬儀や墓の形
まず墓地は日本中にどのくらいあるのだろうか。厚生労働省の統計では、全国に約87万3441カ所。ただ広さは千差万別なので総面積がはっきりつかめない。概算で23万ヘクタール以上と思われるが、これは東京都の面積をはるかに超える。 寺などに付属するものはともかく、近年の墓地は、山林を大規模に切り開いて造成されることも多い。100ヘクタールを超える巨大墓地も生まれている。一方で納骨堂も増えており、約1万2400カ所ある。 現代の日本では、年間約130万人が亡くなる。しかし、葬儀や墓地の需要はそれに比して伸びていない。また既存の墓地も継承者がわからなくなり、管理費も支払われないなど墓地経営が立ち行かなくなってきたところも現れている。今後継承者の減少から3代を重ねると約半数が無縁墓になるという研究結果が出ていた。
また葬儀も、今や家族葬つまり近親者だけの小規模化が進んでいる。告別式をせず直接火葬する直葬も増えた。高齢者は亡くなるまでの介護年数が伸びたため、介護に費用を取られて葬儀や墓地にあまり金をかけない傾向が進んでいた。 加えて家の宗教的な結びつきも弱まったことで、儀式の簡素化が進み、さらに火葬後の遺骨の引取を断る話もある。また墓を造らず遺骨を自宅に置いたままのケースも増えているそうだ。 そこに登場したのが樹木葬だったのである。樹木葬は、墓石の代わりに樹木を植える、もしくは森に生えている樹木の下に埋葬する形態である。基本一人一墓で、永代供養し宗教宗派を問わない。さらに多くが生前契約だった。 費用もかなり安くつく。ケースバイケースだが、石墓の半分以下が多いようだ。永代供養だから墓の継承や管理費もいらない。遺族が助かるだけでなく、墓地経営者も生前に契約金を受け取れることから好都合なのだ。 なおペットと一緒に埋葬してほしいといった希望をかなえられるのも樹木葬が多い。通常の墓地は、人間以外は埋葬禁止である。