フィリピンにアメリカ配備の中距離ミサイル、合同演習後も撤去せず…本土が射程に入る中国反発
米軍がフィリピン軍との合同演習の一環として比北部に配備した中距離ミサイルシステムが撤去されないことに、中国が反発している。中国本土も射程に入るためだ。南シナ海の領有権争いで中国と対立する比側は配備継続を望んでおり、米比と中国の間の新たな火種になりつつある。(ワシントン 田島大志、北京 東慶一郎、ハノイ 安田信介) 【地図】ミサイルが配備されたフィリピン・ラワグの位置
米陸軍は4月、米比陸軍による毎年恒例の合同軍事演習「サラクニブ」に合わせ、中距離ミサイルシステム「タイフォン」を一時的に配備した。射程は約1600キロ・メートルで、これまで海上から発射されていた巡航ミサイル「トマホーク」を地上から発射でき、中国本土も射程に入れる。ロイター通信によると、台湾の南端まで400キロ超のルソン島北部ラワグの空港に設置された。ラワグは南シナ海に面している。
演習が終わってもミサイルシステムは撤去されず、同通信やAP通信は9月、比政府関係者らの話として、配備が継続されると伝えた。来年4月の定例の米比合同軍事演習「バリカタン」の時期までの配備を検討しているとみられる。台湾周辺や南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国への抑止力強化が狙いのようだ。
これに対し、中国国防省の報道官は10月31日の記者会見で、中距離ミサイルシステム配備に反対する考えを示した上で、「米国は関連地域での戦争リスクを高めている」と非難した。
ミサイルシステムが配備されたラワグは台湾との間のバシー海峡に近い。バシー海峡は中国軍の空母艦隊などが西太平洋に進出する際の重要航路の一つで、ミサイルが配備されれば、海峡を通過する艦隊が脅威にさらされる。中国国内では、「台湾有事の際、米軍がフィリピンに配備したミサイルで介入するのではないか」(中国メディア)との臆測が絶えない。
米国は1988年発効の旧ソ連との間に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約により、射程500~5500キロ・メートルの地上発射型ミサイルの保有が長年できなかった。