まだ地球の近くにいる火星と周辺の星を梅雨の晴れ間に観察してみましょう
5月31日、火星接近のニュースが話題となっていました。今となっては「もう終わってしまったことじゃないか」と思われるかもしれませんが、この火星接近は日食や流星群とは違い、その日しか見られないものではないのです。6月中はまだまだ火星は近く、肉眼で見るのなら、十分に楽しめる日が続きます。梅雨の晴れ間に夜空を見上げて、目を奪われるほど明るく輝く赤い星をぜひ注目していきましょう。 【写真】火星が地球に最接近、ハッブルが捉えた火星の姿とは?
火星ってどんな星?
火星は、地球の1つ外側を公転している惑星です。大きさは、地球の半分くらい。私も大きさを知ったときは、火星って地球より小さかったのだと驚きました。 火星は肉眼で見たままの赤い星です。でも、地球でいう北極や南極にあたる場所には白い部分があります。そこは極冠(きょっかん)と呼ばれていて、主にドライアイスでできていると言われています。また、火星には薄い大気があります。でも地球よりもとても薄いので、呼吸をするのはとても困難です。最近では火星に移住する計画も聞きますが、実現できたとしても外を歩くときは宇宙服が必須というわけですね。ちょっと不便な星かもしれませんが、火星では昼間の空が赤く、夕焼けが青く見えるそうです。そして夜空には青く輝く地球が見えることも。 今、私たちが地球から火星を見ているように、火星から地球を見ることができたら……。何だか素敵ですよね。あなたは、火星に行ってみたいと思いますか?
火星と周辺の星を観察してみよう
今の時期だと午後8時ごろ、東の空にひときわ明るく輝く赤い星が火星です。さらに、もう少し東の方にも明るい星が見えませんか? うっすら黄色みがかった、ほとんど瞬いていない星が土星です。そして、土星からふと目線を下げるとピカピカと瞬く赤い星があります。それが、さそり座の一等星「アンタレス」です。実は、この3つの星の関係を観察しているととても面白いのです。3つの星を結んだら、小さな三角形になりますが、この三角形は春の大三角などとは違い、形が一定ではありません。 5月の上旬頃の火星と土星とアンタレスの三角形は図のような形でしたが、今夜空をみると全然ちがうことがわかります。さらに7月、8月の予想位置をみると、こんなにも火星の位置がみるみる変わっていることが感じられます。面白いですよね。 遥か昔の人たちは、周りにある星に対してこんなにも位置が変わり、変わった動きをする星を不思議に思ったはずです。このように、惑(まど)うように動くことから「惑星」と呼ばれるようになったと言われています。さらに、土星もわずかですが位置を変えていきます。1カ月ごとでもかまいません、ぜひ今しか見られない形が変わる三角形を観察してみてください。
火星のライバル
火星の位置にも注目してもらいたいのですが、もう1つ注目してもらいたい星があります。 それは今だけ三角形をつくっている星の1つ、一等星「アンタレス」です。アンタレスの意味は「火星のライバル」。火星に対抗して赤く輝いているように見えたところから、そう名づけられたそうです。 今の時期は、そんなライバル同士が近くで輝いています。今年は接近直後なので明るさでは火星が圧倒していますが、赤さはどうでしょうか。どっちの方がより赤く見えるのか、あなたの目で確かめてみてください。 次回はちょうど梅雨の時期なので、春の夜空に隠れた星座たちをご紹介します。 (葛飾区郷土と天文の博物館・湯澤真実)