『虎に翼』脚本家・吉田恵里香さん(36)「朝ドラを書くのは長年の夢でした」|VERY
2024年度前期の連続テレビ小説『虎に翼(NHK)』の脚本を担当する吉田恵里香さん。2022年には『恋せぬふたり(NHK)』で向田邦子賞、ギャラクシー賞を受賞しました。吉田さんは、脚本を書く中で「『家族』という言葉の持つ意味を変えたいと思った」といいます。その理由は……? 私生活では3歳の男の子の育児中でもある吉田さんに、念願の「朝ドラ」を書く今の心境をお聞きしました。
あえて「恋愛」を描く理由
──『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(テレビ東京)』や『恋せぬふたり(NHK)』など、これまでも多くの人気作品を手掛けてきた吉田さん。結婚や家族といった従来の枠組みの中ではうまく生きられなかったり、居心地が悪いと感じる人々を描いています。 脚本の仕事をする中でセクシュアルマイノリティなど、これまでのドラマ作品においては「存在しないもの」として扱われてきている人がとても多いと気づきました。以来、その人たちの存在を透明にしない世界を書きたいとずっと思っていたときに、『恋せぬふたり』の脚本を書く機会をいただきました。そもそも「アロマンティック・アセクシュアル※」という言葉自体を知らない人が多い中で、誤解を与えないように書くにはどうしたらいいかを慎重に考えました。 ※アロマンティック:他者に恋愛的に惹かれない人 アセクシュアル:他者に性的に惹かれない人 ──ドラマの表現において「誰も傷つけない」ことは難しいかもしれません。どんな着地点を目指しましたか? 『恋せぬふたり』はタイトル通り、「他者に恋愛感情を抱かない」二人の物語ですが、あえて恋愛にまつわることを作品の軸にしています。まったく恋愛シーンを書かずに、他者に恋愛感情を抱かないという登場人物の思いを書くことはやっぱり難しくて。「恋しない」ことを炙り出すために恋愛を軸にするのは相反しているなと思ってはいたのですが、世の中の人の多くが知らない事象を描くときには通らざるを得ないプロセスなのかもしれないと思い、葛藤はあったものの途中から割り切って書き進めました。結果、あえて恋愛、結婚、夫婦、家族というものを通すことで、アロマンティック・アセクシュアルを書くことができたと思っています。