運動科学者もみずから実践! 身体のパフォーマンスを最高に高める最も手軽な方法
脳でイメージした通りに動き、ムダな力が抜けたしなやかな筋肉をつくるトレーニング、それが高岡英夫氏の提唱する「レフ筋トレ」だ。いまあなたが取り組んでいるトレーニングをレフ筋トレに近づける「レフ化」のメソッドにはさまざまなものがあるが、ここではそのなかから著者が基本と位置付けるものの1つ「正確無比な身体使い」を、最新刊『レフ筋トレ 最高に動ける体をつくる』から紹介する。 なぜイチローは筋トレを「否定」したのか……運動科学の第一人者が解き明かす真理
なぜ正確無比な身体使いが大切か
いい加減な動作から、最高のパフォーマンスが生まれることはありません。最高のパフォーマンスをするためには、身体の潜在力を十分に活かしきる使い方をしなければいけないのです。身体を正確に使うことで、はじめて脳の高能力化も期待できるのです。 また、歪み・ブレ・ぐらつきが生じる動きは、身体にダメージを与えます。 たとえばブリッジを考えてみましょう。ブリッジは背筋を鍛えるための筋トレです。ブリッジをする人はたいてい、腰背部の筋力で腰椎(腰の骨)を反らしながら体幹を上げようとしますが、このような動きをすると、腰椎まわりに強い圧力が加わります。 さらにこの状態でブリッジを続けると、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の収縮反射によって膝が伸び気味になり、腰椎まわりへの圧力はより強くなっていきます。この圧力が、椎間板ヘルニアなど、腰部のケガや障害のもととなるのです。 いうまでもありませんが、身体を傷害しかねない筋トレは「ラフ筋トレ」です。筋トレのレフ化のためには、正確無比な身体使いが欠かせません。正確無比な身体使いは、「1 骨格のフォームと筋肉使い」と「2 格定(かくてい)(歪み・ブレ・ぐらつきなし)」の2つからなります。 以下この2つを説明したのち、記事の後半ではブリッジ姿勢で行うレフ筋トレを1種目、ご紹介します。
「骨格のフォームと筋肉使い」と「格定(歪み・ブレ・ぐらつきなし)」
最初に触れた「骨格のフォームと筋肉使い」は、筋肉、関節、骨格の使うべきところを正確に使おう、ということです。以前の記事で私は、ハムストリングスを集中的に鍛えた結果、かえってアスリートのパフォーマンスが落ちてしまった出来事についてとりあげました。 <リンク:金メダルがわずか4、5個に激減……運動科学者が解き明かす日本スポーツ「暗黒の時代」とその「意外な原因」> この失敗は、「走る」という運動で、ハムストリングスがほかの筋肉、関節、骨格と関わりながらどう働けばよいかを、コーチ、トレーナーや選手が理解できていなかったから起こったことです。 もっとも、最近は理解が進んでいるようです。たとえばいまのサッカー日本代表の選手たちは、その身のこなしを見ても、ハムストリングスと大臀筋(だいでんきん)を連動させて股関まわりで使うことが大事だということをわかっているように思われます。 次2つめの「格定(歪み・ブレ・ぐらつきなし)」とは、筋肉と骨格を使って身体を固定することです。 私はこれまで、数々の著作物で身体を「ゆるめときほぐすこと」の重要性を説いてきました。一般的にも身体は固めるより「ゆるんでいる」ほうが直感的な印象がいいので、「固定」というと、ゆるめ、ときほぐすことと矛盾するように思えるでしょう。しかし、そうではありません。 動き始めてから動き終わるまで、身体がぐらついたりせず、わずかな歪みすら生じず、最高のパフォーマンスが発揮できる状態や角度に筋肉、関節、骨格などをピタッと決めることを「格定」というのです。 すなわち、身体をゆるめときほぐしつつ、点検脱力をきちんとやったうえで、なおかつ動く角度や動いたあとの位置などは一切ブレさせず、キッチリ固めるという非常に高度な使い方なのです。 言い換えると、きちんとした目的性をもって固める、それが「格定」です。 たとえば、スクワットでは開脚しますが、それぞれの脚の位置関係や、背骨の、とくに仙骨から腰椎(ようつい)にかけての非常に重要な脊椎部分の角度関係を決める、つまり格定するわけです。歪み、ブレ、ぐらつきのこの3つを絶対に起こさないようにするためには、格定する必要があるのです。