「オタクをつきつめた結果」、芸術性の高いコスプレ写真にたどり着く
芸術性の高い「コスプレ写真家」たちの作品は、もともとカメラや撮影の好きな人たちによるところが多い。 しかし、今回紹介するKHさんは、もともとは「根っからのオタク」だったという。そんなKHさんはどのようにしてコスプレ写真を芸術レベルに引き上げていったのだろうか?
デジタル一眼レフ購入で人物撮影の楽しさに目覚めた
東京都内で半導体メーカーの営業として働くKHさんは、社会人になって8年ほど経つが、もともとコスプレというジャンルを知らなかったという。 「大学時代は、旅行や日常のスナップを撮る目的でコンパクトデジカメを愛用していました。旅先の風景などを撮るうちに、いつかはデジタル一眼レフが欲しいなと憧れていて、社会人になって夢が叶いました。初めて買ったデジタル一眼レフはニコンのD90です」 KHさんは、その後も旅行先で友人などを撮影していたが、風景やスナップよりも人物を撮るのが楽しいと思うようになった。ちなみに、彼はアニメやゲーム、漫画が大好きな「オタク青年」でもあった。そんなKHさんが、コスプレと出合うのは偶然というよりも必然だったのだろう。 「もっと人物撮影できる場がないかと探したところ、参加費2000円くらいで7~8時間も人物撮影ができる“コスプレイベント”が毎週のように開催されているのを知ったんです。思い切って飛び込んでみたら、人物を撮るのがこんなに楽しいのかと! それも可愛い女の子が、可愛い衣装を着ていて最高! 1回でハマった感じです(笑)」 ここまで素直に、あっけらかんと「可愛い女の子を撮りたかったから」と言われると、逆に清々しさまで感じてしまう。そこは普通、もう少しオブラートに包むだろう……。
“好きこそものの上手なれ”を地で行くコスプレ撮影活動
コスプレという世界に“出会ってしまった”KHさんは、急速にコスプレ撮影の“沼”へとハマっていく。コスプレイベントに参加して、コスプレイヤーを撮らせてもらう。時にはコミケなどの大きなイベントへも出かけていくようになる。当初は、たくさんの可愛い女の子を撮影するだけで満足だった。 「でも、コスプレを撮るようになって半年ぐらいすると、ひとりのコスプレイヤーさんをじっくりと、自分の好きな場所でキャラを撮りたいという欲求が出てきたんです。イベントでは、せいぜい1人のコスプレイヤーさんを2~3分しか撮影できないので。ただ、それには相手に納得してもらえるクオリティの写真が撮れないとダメなんです。上手くなりたい! って思いましたね(笑)」 いわゆる“個人撮影”というものだが、お互いに貴重な時間とお金(スタジオ・衣装代など)を費やして行われる以上、写真の品質に関してもギブ・アンド・テイクでなければならない。KHさんは、コスプレイヤーに選ばれるような撮り手になれるように努力を始めた。 「もともと緩く旅行先の景色を撮ったり、日常スナップを撮るくらいだったので、言わばコスプレ写真が私にとっては“写真”みたいなものです。素敵なコスプレイヤーさんを撮らせてもらう、それだけで楽しいのですが、現在では私の写真をどこかでご覧になって、コスプレに興味のある方々、良く知らない方々にも“すごい!”とか“面白そう!”って思われる写真を1枚でも多く残して、このコスプレ写真の世界を知ってもらうきっかけになれば嬉しいと思って活動しています」 自分の好きなものをたくさんの人と共有したい。KHさんのコスプレ撮影に対するモチベーションは、シンプルで非常に分かりやすい。だからこそ、写真上達への道は一直線に進めたのかもしれない。