「オタクをつきつめた結果」、芸術性の高いコスプレ写真にたどり着く
濃い世界だからこそ奇異の目で見られても良い
芸術性を求めるコスプレ写真が増えてきた中、KHさんは自身の作品をどのように捉えているのだろうか。 「正直、撮り始めたころから現在まで一貫して、コスプレ写真はあくまで趣味の産物だと考えているんです。なので、コスプレ写真をアートのように高尚なものだと考えていません。ただ、慣れてくるにつれて、撮影に対する考えが少し変化してきました。コスプレという趣味の世界は、サブカルの中でも“濃い”ジャンルで、それゆえ一般の方からはしばしば奇異の目で見られることもあります。いまだに“キレイなお姉さんがセクシーな格好をして、ローアングルでカメラ小僧に撮られる世界”と思われている方も少なくないと感じますし。まあ、ごく一部そういった界隈もありますが……」 意外な回答に記者は少し面食らった。KHさんの高い作品性から、当然アートな思考が強いのだろうと思っていたからだ。 「もちろん、そういったコスプレを文化として捉え、その地位向上を目指して活動されている方もたくさんおられますし、否定するつもりはありません。ただ、私にとってコスプレ撮影は趣味であり、キラキラに輝く可愛い女の子を全力のクオリティで写真に残したいという欲求がモチベーションになっているんです」 確かに、言われてみればKHさんの作品は明るく、キラキラとしたイメージが強い。そして、趣味のレベルを超えたクオリティの高さに圧倒されることも多い。それもそのはず月に4~5回、つまり毎週コスプレを撮影しているのだ。これだけ場数を踏めば、写真の上達も早い。クオリティの高い写真を撮れば、美しく、かわいく撮られたいコスプレイヤーからの依頼が増える。それに応えるように撮りまくる……。まさに好循環がKHさんのコスプレ撮影には起こっているのだ。
被写体の感動が伝わるような写真を撮っていきたい
撮影したコスプレ写真は、どのように発表しているのだろうか。 「以前はブログに投稿していたのですが、最近はもっぱらTwitterです(@Thundermare)。最近では自家プリントで印刷にもこだわっていて、A3~A4くらいのサイズで印刷したプリントを何枚かモデルになったコスプレイヤーさんに渡しています。コミケなどで写真集などを自分名義で頒布することは、最近はやっていません。ただ、コスプレイヤーさんをサークル主として、私が裏方に回った作品を含めると40~50作品は制作しています」(KHさん) これだけのクオリティの作品集なら、さぞかし好評なのだろうと思いきや、 「100部以上売れたタイトルは全体の半分くらいだと思います。もっとも売れた作品で400部という感じです。売上金は、撮影にかかった経費でほとんど消えて、経費も出ずに赤字になることもしばしばです。儲けを考えたら、やっていられません(笑)。大半の方がそうだと思いますよ。同人活動って、儲けを考えずに惜しみなくお金をかけてこだわる方が多いんです」 今後の活動について聞いてみた。 「私の根っこにある原動力は、今も昔も可愛い女の子の可愛い衣装を撮りたいという“カメラ小僧”な部分。これは10年近く変わらないので、今後も変わることはないと思います(笑)。ここ数年は、アイドルものの撮影に凝っているんですが、女性から見てもキラキラに輝いているアイドルというものは特別な存在なようで、実際スタジオに立つコスプレイヤーさんにカメラを向けると“アイドルになりたい、なってみよう!”というスイッチが入る子がけっこういて、そのときの充実した表情や滲み出る楽しい雰囲気で、こちらまで楽しくなってきます。今は、まだまだ写真で表現できないのですが、可愛い女の子の可愛い衣装を高いクオリティで残すだけではなく、いずれは被写体の感動も伝えられるような写真を追求していきたい」
好きだから極めたいという気持ちに、ジャンルは関係ないのだろう。インタビューの最後にKHさんは「コスプレは濃いサブカルの極致といった世界ですが、よく知らない方にも“おっ、すごく可愛いな”と少しでも思わせたいし、興味を持ってもらえたらイベントなどでコスプレの世界を体験してほしいと思っています」と締めくくった。 (取材・文・写真:水澤 敬)