「立ち姿さえ簡単には真似できない」歌舞伎『あらしのよるに』モチーフ「食べちゃいたいそう」で体操の誠お兄さんが抱いた“夢”
12月28日11時から「疑似生配信」されることが決定した歌舞伎『あらしのよるに』。当日生出演される第12代・体操のお兄さんである福尾誠さん。前編でもお話いただきましたが、特典映像「食べちゃいたいそう」出演をきっかけに、初めて歌舞伎に触れたそうです。体操というスポーツを極めてきた福尾さんが初めて開いた歌舞伎、日本舞踊への扉。誠お兄さんならではの視点から、歌舞伎の魅力についても伺いました! 【画像】「食べちゃいたいそう」を踊る福尾誠さん ――『あらしのよるに』を実際に観劇して、迫力に圧倒されたと仰っていましたね。 福尾誠さん(以下、福尾) 観劇前はやっぱり初めてなので不安もあって。原作は知っていたので、歌舞伎になるとどういう表現になるだろう、といったことは何度も考えていました。実際、そんなことを考えるひまがないぐらい、夢中でしたね。 ストーリーの中では動物しか出てきません。でも、舞台では全員人間が演じているわけです。歌舞伎の表現力の凄さを改めて感じました。 ――女方さんはどうでしたか? 福尾 舞台上で拝見するのは初めてで、でも今回は性別より、動物しか出てこない物語なことに圧倒されてしまって。おそらく歌舞伎には、姿勢とか手の形といった、動物の演じ方や見せ方の「型」がありますよね。子どもたちが初めて見ても、狼と山羊の物語だなって、原作を知らなくても伝わると思います。 ――藤間勘十郎さんの指導はどうでしたか? 福尾 歌舞伎「あらしのよるに」の演出・振り付けの先生ですから、とんでもないほどの貴重な経験だ! と思いながらも怖かったらどうしよう……と思っていたんですけど(笑)、とてもお優しくて、むしろ優しすぎると思うくらい、丁寧に教えてくださいました。見得や動きを目の前で見せてくださって、迫力がすごくて! 音ひとつとっても、やっぱり自分がやるのとは全然違いました。
「僕、もうちょっとトレーニングし直さないといけない」
――歌舞伎の場面で、踏み出した足が大きく音がすることがありますよね。 福尾 先生みたいに大きい音を出そうとするだけなら、力任せにやれば出ると思います。でも、先生はそういう音じゃない。体重の乗り方なのか、多分使う筋肉も違うのかもしれません。「なんでそんな音が出るんだろう!?」とずっと思っていました。 ――アスリートの方はやはり、筋肉や運動の仕組みについて着目されるんですね。 福尾 今回の「食べちゃいたいそう」は分かりやすく、真似しやすい動きにはなっています。運動という視点から見ると片足でバランスを取るとか、ジャンプをするとか、そういったひとつひとつの動きにその運動としての意味も持っているなと感じました。激しい動きこそないですが、実際に踊っている僕は、皆さんが思う運動量よりかなり多いと思います。 ――収録を見学していて、体幹が必要なたいそうだなと思いました……。 福尾 ぴったり止まる動きって、足腰の筋力がすごく必要だなと感じました。失礼な表現でしたら申し訳ないのですが、踊りにスポーツの要素が存分に含まれているんだなと。歌舞伎俳優の皆さん、本当に足腰が力強くて。アスリートよりも筋肉あるんじゃないかなあ、僕、もうちょっとトレーニングし直さないといけない、到底追いつけないレベルかもって思うほどでした! ――体操のお兄さんであり、アスリートでもある誠お兄さんでもそう思われるんですか!? 福尾 僕は、今回がぶを意識したかっこいい衣裳を着せていただいたんですけど、実は結構重いんです。いつもは半袖のラフな格好なので、びっくりしてしまって! 歌舞伎俳優の皆さんはこれを着て、もっと重たい衣裳を身につけた上であれだけかっこよく、綺麗に立っているわけで、やっぱりすごい。実は真似したくて、鏡の前でずっと立ってみているんですけどね。