スコップ三味線「ワールドカップ」とは? バチは栓抜き 毎年開催の大会、コンサートさながら
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。 【画像】スコップ三味線とは? 動画はこちら
まるでアイドルのコンサート…
先週に引き続き、岩手で取材をしていて「なんだ、こりゃ?」と思ってしまった出来事シリーズ第2弾。 雪かき用のスコップを津軽三味線に見立て、栓抜きでたたいて音楽を奏でる北東北の宴会芸「すこっぷ三味線」の大会が毎年、岩手県北上市で開かれている。 「すこっぷ三味線・ワールドカップ・チャンピオンシップ・2024・イン・岩手」 2014年に近隣のスキー場で開催されて以来、11回目の開催だという。 北海道や東北、関東の各地から約130人が参加し、音楽に合わせて「カンカンカン!」と得意のバチさばきを披露する度に、大きな笑い声と惜しみない拍手が送られる。 超満員の会場からは音楽に合わせてうちわを振ったり、大きな声で名前を呼んだり、まるでアイドルのコンサートさながらだ。
誰でも間違いなく人気者に…
「実は今、全国的にもスコップ三味線の人気がウナギのぼりなんです」 第7回すこっぷ三味線世界大会のチャンピオンである「ひょっとこ太郎」さん(71)が興奮気味に教えてくれた。 「誰でも気軽に始められ、温泉旅行でも間違いなく人気者になれる。笑いながら元気になれる健康法でもあるんです」 団体の部で優勝したのは、宮城県加美町から出場したチーム。 代表の星佳友子さんは「冬場の雪かき用のスコップを洗って持ってきました。ストレス解消にもなり、仲間とみんなで楽しんでいます」。 「あなたもやってみない?」と会場で、参加者の中年女性たちから誘われた。 「岩手勤務なら、雪かき用のスコップ、2、3本持ってるでしょ?」 スコップと栓抜きを渡され、見よう見まねで「カンカンカン」とやると、女性の一人が「随分と脈があるわ。来年の大会、チャンピオンを狙えるかもよ!」と言って笑った。 (2024年11月取材) <三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した>