トヨタの2030年目標達成は現実か? 中国市場「300万台生産計画」と、トランプ再選後の試練とは
メキシコ生産車、関税200%の脅威
では、それによって日本企業にはどのような影響が考えられるか。 トランプ氏は中国を除く諸外国からの輸入品に対して10%から20%の関税を課すと主張しており、日本企業はまずこの壁に直面することが考えられる。これに対してトランプ政権が日本などの同盟国を対象外にすることは考えにくい。 そして、トランプ氏は中国製品に対する関税を一律60%に引き上げると主張しているが、これも実行に移されていく可能性が高い。しかし、日本企業のなかには 「中国でモノを製造し、それを米国に輸出する」 企業もあるが、その製品も関税60%の対象になり、これはかなりの重荷となろう。 さらに、トランプ氏はメキシコからの輸入車に対して200%以上の関税を示唆しているが、これはメキシコで自動車を生産し、米国へ輸出している中国企業を意識したものだろう。 だが、同じように日本の大手自動車メーカーもメキシコで生産した自動車の多くを米国へ輸出しており、関税200%の影響を受ける可能性も否定できない。これについて、ホンダの副社長は、 「メキシコ生産車の8割を米国に輸出している。そこに関税がかかるのであれば事業に与える影響は非常に大きい」(『日刊自動車新聞』11月6日配信) とコメントしている。
米中半導体の競争激化
一方、トランプ再来によって「保護主義」を強化する米国に対して、中国は自由貿易の重要性を強調し、諸外国との経済、貿易関係の強化に拍車を掛けてくる可能性もある。 保護主義とは、国内産業を外国の競争から守るために、政府が輸入品に対して制限や関税を課す経済政策のことだ。具体的には、輸入品に高い関税を設定したり、輸入制限を設けたりして、国内の産業を守ったり、国内企業を支援することを目的とする。 バイデン政権下で、米中の間では 「先端半導体」 をめぐる覇権競争が激化し、日本はバイデン政権と足並みをそろえる形で中国に対する半導体輸出規制を開始したことから、中国の日本に対する貿易的不満が強まった。 しかし、中国にとっても日本は重要な貿易相手国のひとつであることから、トランプ再来をテクニカルに解釈し、貿易保護主義に対して協調路線を採るという観点から、日本との経済・貿易関係の強化に乗り出し、中国に進出する日本企業にとって 「明るい材料」 になる可能性もあろう。
和田大樹(外交・安全保障研究者)