繰越金500万円超え、増えた町内会費どうすれば… 高齢化で管理に不安の声、トラブル防ぐには?
「町内会費の繰越金が500万円を超えている。今後の管理が不安」。広島県福山市の公営住宅に暮らす80代女性から中国新聞備後本社に声が届いた。取材を進めると、会員の高齢化や役員の担い手不足など各地の町内会が抱える課題が改めて浮かんだ。専門家たちは、トラブルを防ぐため会計の透明性を確保し、使途を普段から住民同士で議論するよう助言している。 女性が暮らす地域の町内会の会費は毎月200円。新型コロナウイルス禍で行事もままならず、会計資料によると、2022年度末時点の繰越金は約530万円。5年間で約110万円増えた。「役員は高齢で何年も交代していない。本当にきちんと管理されているのだろうか」と話す。 この町内会には会長のほか、会計担当者や監査役などの役員がいるという。会長の80代男性は「毎年会計監査に立ち会い、適正に管理している。会費は災害時に備えてためている」と話す。 毎春の総会などでは決算結果を公開。会費をためた口座の通帳のコピーなどは添付していない。男性は「通帳は会員に求められれば見せる」と話した。 会則では町内会長の任期は2年。なり手不足から男性が10年以上続けている。「花壇の管理や資源回収など町内会の取り組みはたくさんあるが参加者は少ない。住民トラブルなどに対応できる役員のなり手もいない」と不満をこぼした。 市内の別の町内会からも会費を巡る悩みが寄せられた。市中心部の町内会の会長男性(74)は「月300円の会費を負担に感じ、退会するお年寄りが後を絶たない」と話す。地域の街灯やごみステーションの管理のため、会費は必要だが、「若い世帯は町内会に入ってくれない」。 町内会費を巡っては、市東部の町内会で約15年前、当時の会長による横領事件もあった。現在の会長男性(72)は「会の支払い業務や通帳の管理を1人で担う状態が続き、事件が起きてしまった」と振り返る。事件後は毎年、通帳や領収書を突き合わせて会計監査をしているという。 「会費は行政などによる指導や監督が入らないため、特に透明性の確保が重要」。自治会や町内会の運営について多くの著書を手がける地域活性化コンサルタントの水津陽子さん(62)は指摘する。会費にまつわるトラブルは全国で後を絶たないといい、「疑義が生じた場合は住民が声を上げ、通帳等の開示や役員の任期に上限を設ける規約の改定などに動くしかない」とする。 「会計報告が形骸化するとトラブルが起きがち。一方で普段から町内会に関わっていないと実情が分からず、『どうなっているんだ』と不満を抱きやすい」と話すのは、町内会の問題に詳しい中田実・名古屋大名誉教授(社会学)。「役員をいろいろな人が担うなど、みんなが会計や運営を経験すれば仕組みが分かり、不満は出にくい」と話す。 福山市の津之郷学区自治会連合会や市老人クラブ連合会長などを務めてきた多田三千男さん(88)=同市津之郷町=は経験を踏まえ、「使わなかった年は会員にクラブ費を還元する工夫をしてきた」と振り返る。 学区の連合会長だった約20年前、バラ花壇の整備や旅行を兼ねた防災学習会などを企画。花壇づくりは現在も受け継がれる。「まちづくりのビジョンを住民間で共有することが重要。地域のために、どのようなお金の使い方が考えられるか。議論を深めることも大切ではないか」と話した。
中国新聞社