自民総裁選「3強」に求められる具体的な「外交・安保」政策 覇権軍事国家へ毅然と対応、一方で水面下で関係続けるしたたかさも
【岩田明子 さくらリポート】 自民党総裁選(27日投開票)は最終盤となった。24日午前には、党員・党友による地方票(368票)の投票はがき投函(とうかん)期限を迎えた。 総裁選は次期衆院選に向けた「党の顔」を決めるという側面もあり、地方票の傾向は議員心理に大きな影響を与える。その情勢が判明すれば、国会議員票(368票)の動きにも変化が現れる。岸田文雄首相や菅義偉前首相、麻生太郎副総裁、森山裕総務会長ら重鎮の動きも活発化していくだろう。 ただ、岸田首相が強行した「派閥解散」の影響で、自民党内の固まりは流動化している。議員票獲得合戦の激化で、立候補のため集めた推薦人(20人)を下回る議員票しか獲得できない候補者がいるかもしれない。過去の総裁選では考えられないほど、今回は情勢の読みにくい戦いとなっている。 かつてない「大乱戦」ではあるが、各種情勢調査で上位を占める石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安保相の「3強」を軸に進んでいく可能性が高い。 3氏は今後の論戦で、日本を守るための外交・安全保障政策をより具体的に示してほしい。総裁選という「政治的空白」にある日本を揺さぶるかのように、ロシア、中国、北朝鮮という覇権主義国家が軍事的威嚇を強めているからだ。単独での行動だけでなく、中国とロシアが今月、日本海で大規模な合同軍事演習を実施するなど結びつきを強めている。 石破氏は「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」を提唱し、アジア地域で集団防衛体制を構築する必要性を主張している。だが、東・南シナ海での権益拡大をはじめ、利己的ともいえる行動が目立つ中国の存在を考えると、どのように機能させていこうとしているのかが分からない。 小泉氏は13日の共同記者会見で、北朝鮮による拉致問題について、「首相になればトップ同士、(金正恩朝鮮労働党総書記と)同世代なわけだから、今までのアプローチにとらわれず、前提条件なく向き合う、新たな機会を模索したい」と述べたことが不安を感じさせた。 小泉氏の父、純一郎首相は2002年、史上初となる日朝首脳会談で拉致被害者5人の帰国を実現したが、ジョージ・ブッシュ米大統領(当時)が同年の一般教書演説で北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しして米朝関係が緊迫化するなかで、トップ会談にこぎ着けた。「同世代」を強調する小泉氏だが、その発言からは首脳会談につなげる戦略が見えない。