【コラム】サウジとの大一番で有言実行のゴールも”生粋のストライカー”は一喜一憂せずに次へ向かう「ここからが勝負」 | 日本代表
【サッカー日本代表・コラム】日本代表は11日、2026年ワールドカップアジア最終予選第3戦でサウジアラビアと対戦。日本サッカー史上、一度も勝利がない敵地ジッダで、2-0で歴史的な勝利を飾った。その重要な一戦で貴重な追加点を奪い、グループリーグ3連勝に導いた日本代表FW小川航基は活躍の時を待ちわびていた。 ●サウジアラビア×日本|ハイライト
W杯アジア最終予選においてグループリーグ最大の強敵。なおかつ日本サッカーの歴史においていまだ勝利のない敵地ジッダでの一戦。誰もが安易に想像できる”重要な試合”が目前に迫っていた。 そんなサウジアラビア戦を今か今かと待ち望んでいる男がいた。生粋のストライカーである小川航基だ。 「もちろんアウェイなのでホームとは違う戦いになるかもしれない。それは今までの経験でわかっている。だけど、そういった相手にこそ、大一番でこそ自分の力を発揮できるのが自分のストロングだと思っている。誰がどう見てもこの連戦が本当の山場になるし、ここで僕がどれだけできるのか、しっかりと結果を残せるのか、本当に自分自身の真価が問われると思う。小川航基はどうなんだというのが問われると思うので楽しみにしています」 ベンチスタートとなった小川に声がかかったのは、1-0で迎えた76分のことだった。前半のうちに日本は先制点を奪ったが、その後は相手にボールを持たれる時間帯も多く追加点が欲しい状況が続いた。そのタイミングでピッチに立つ小川のやるべきことは決まっていた。得点を取る。目線は常にゴールに向いていた。 「いつチャンスが来ても『俺だろ』という気持ちでいたんですけど、口だけでは誰でも言えることなので。それを現実に有言実行できるかどうかに自分の真価が問われると思っていた」。 その時は81分にやってくる。右サイドのCK、伊東純也が蹴ったボールが中央に向かうと、素早く動き出した小川は、打点の高いヘディングシュートをゴール左に沈めた。 「『来た!』って思いました。(振り返ると)あまり考え過ぎずにヘディングしたというか、たぶん身体に染みついているものが出たんだと思います」。 エールディヴィジ(オランダ)のNECナイメヘンに移籍して以降、クラブで結果を残し続けたことで日本代表にコンスタントに呼ばれるようになった。ただ、決して日本代表でレギュラーの座を掴んだわけではない。アピールをしていくには、まだまだ出場時間が限られる中、少しずつ結果を残していくことが求められていた。 それでも、6月のミャンマー戦で2得点を記録すると、最終予選では2試合連続ゴールを記録。「単発で活躍できる選手なんていくらでもいる。継続してずっと長い間しっかりと点を取り続けたり、活躍できる選手が本当のいい選手だと思う」と口にする中で、日本代表でも確かな結果を残し始めている。 もちろん今回の結果には喜びつつも、一方で少しも浮かれた様子を見せない。いい流れを継続するためには一喜一憂している時間などない。それを理解する小川の視線はすでに次の戦いへと向かっている。 「(継続していくためには)自信をしっかり持つところは持つ、でも一喜一憂しないことが大事。鼻が伸びるようなことはやっていないけど、ここからが勝負なんです。自分自身がやるべきことをやり続けていれば、自ずとチャンスはやってくると思う。そのチャンスが来たときに、自分がどういうふうなマインドでいるか、準備ができているか、コンディションが整っているかというところにフォーカスしてやっていきたい。やっぱり僕が目指しているところはW杯。ここからしっかりやっていきたいと思います」 結果が出ているからといってまだ何かを掴んだわけではない。次のオーストラリア戦も先発かどうかなんてわからない。だからこそ小川は、次なるチャンスでも結果を残すために、自分ができることに向き合いながら準備を進めていく。 文・林遼平 埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。