周りに合わせる必要はない...「発達障害」「自閉症」に悩む自分を大きく変えた「ある体験」
医学系出版の大手・医学書院。そんな名門から、医学書とも人文書ともつかない“異端のシリーズ”が刊行されていることをご存じだろうか。 【写真】「ケア」をめぐる話が、思いもよらぬ「過激な結論」にたどり着いたワケ そのシリーズの名は〈ケアをひらく〉。2000年の創刊以来、ジャンルの垣根を打ち壊す刺激的なラインナップを連発し、話題を呼んできた。2019年にはシリーズ全体が毎日出版文化賞を受賞している。 2024年3月、そんな「伝説」のシリーズをたったひとりで手がけてきた編集者、白石正明氏。その退職にあわせて、〈ケアをひらく〉の軌跡を振り返るイベントが、東京・下北沢の「本屋B&B」で3週連続で開催された。 本連載では、その模様をダイジェストでお届けする。今回は、『みんな水の中』の著者・横道誠氏と白石氏が登壇した最終回である。 (構成:高松夕佳)
〈ケアをひらく〉の歩んだ道
横道 大盛況ですねえ。私が本屋B&Bのイベントに登壇するのは今回で8、9回目なんですが、こんなに人が集まっているの、初めて見ました。 白石 出過ぎですよ、横道さん(笑)。 横道 白石さんの引退イベントというと、僕の中では昨年2023年6月にふたりでやったオンラインイベント「当事者、当事者研究、当事者批評~『シリーズ ケアをひらく』のめくるめく世界」が最初です。3月に医学書院を退職されると聞いていたので、一種のお別れ会のつもりでした。あのときは私が録画に失敗して、後半が配信できなかったのですが。 白石 あれ面白かったですよね。特に〈ケアをひらく〉シリーズの全冊について語った前半部分がすばらしかったのですが、そこが録画されていない(笑)。でも、あそこが配信されなかったおかげで今回、「精神看護」(2024年3月号)の特集企画(「特集 白石正明さん(編集担当)が主観で解説する シリーズ〈ケアをひらく〉全43冊」)ができたんです。 横道 この特集、大変だったのではないですか。 白石 僕は本をめくりながら合わせて十数時間ほどしゃべっただけですが、正月返上で文字起こしした編集部は大変だったと思います。でも僕の記憶もいい加減で、そうだと思っていたことがだいぶ違っていましたね。たとえば岡田美智男さんの『弱いロボット』立案のきっかけが、「現代思想」のロボット特集だったと思っていたら、実際にはメルロ=ポンティ特集だったとか。 横道 「ロ」しか合ってませんよ! 白石 そうそう。僕の記憶の中では、ロボットに関する素晴らしい論考が並ぶ中で、岡田さんだけがしょぼい(笑)ことを言っている、という思い違いがされていた。そういうこともありましたが、だいたいは覚えていましたね。 横道 〈ケアをひらく〉の他にも何冊も手がけられているんですね。 白石 実は僕が作った本の中で一番売れているのが、『ユマニチュード入門』(本田美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ著)なんです。この本はそれだけではありませんが、やっぱり売れるのは実務書です。 横道 私もそういう本作りたいです。ヨコミチュードとか。 白石 ヨコミチュード!? (笑)。あとは、2009年に精神看護の教科書を全面的に作り変えました(『新看護学15 精神看護』)。「べてるの家」を教科書に初めて登場させてもらったりで楽しかった。