小池知事、市場移転「AかBかだけではない」 築地ブランドにあらためて配慮
豊洲市場への移転問題で、東京都の小池百合子知事は17日、築地市場(東京都中央区)を訪問し、市場関係者に対して豊洲市場の地下水の有害物質を環境基準以下にする「無害化」の未達成を陳謝した。意見交換では、豊洲移転、築地再整備などを求める声のほか、両案を検討するプランなどを業者から聞いた。小池知事は、築地ブランドにあらためて配慮を示した上で、市場移転に関しては「AかBかという観点だけではない」と二者択一ではないとの姿勢を強調した。 【中継録画】小池知事が築地市場訪問 豊洲の無害化未達成を陳謝
あらかじめ決まった業者が意見を表明
今回の訪問は、15日に開かれた市場のあり方戦略本部の第3回会合の最後に、小池知事が「きちっと現場の方に謝るのが筋かなと思う」と発言し、行われた。 会場となった築地市場講堂には、水産卸や水産仲卸、青果卸、その他関連事業者ら128人が詰めかけた。小池知事は冒頭、「皆様との(無害化の)約束を現時点でも守れていないことについて、あらためて都知事としてお詫び申し上げたい」と8秒ほど頭を下げた。その上で「築地市場は世界でもまれなブランド力がある。その(ブランド力を培ってきた)歴史をあっという間に消し去るのはできない」とあらためて述べた。 市場関係者からの意見聴取では、あらかじめ決まった業者が数分ずつそれぞれの意見を知事に訴えた。 水産仲卸業の女性は築地ブランドへの誇りと愛着を口にした。「(豊洲のような)毒があるところにはいけない。築地を食の発信地にしたい」。一方、水産卸業者は「築地に愛着はあるが、狭隘(きょうあい)で設備も古く、限界だ」と指摘し、「安心安全面でも物流の面でも豊洲がいい」と移転に賛同した。そして豊洲移転の際は「安全宣言」を出して消費者らの不安を払拭してほしいと求めた。
築地と豊洲で機能を分けるプランも
築地・豊洲両市場の特徴を生かしたプランを知事に求める意見も出た。この水産仲卸業者は、現状では豊洲移転は難しいと述べ、「築地の地を離れると築地ブランドはなくなる」と危機感を示した。築地では80年かけて食の安全安心や価格の決定機能を培ってきたと説明し、「築地にそういう機能を残すような再整備案をお示しいただきたい」。さらに高機能の物流網は必要だとして、「豊洲は物流機能の効率化を図るために使う案もお考えいただきたい」と提案した。 「テレビでコメンテーターやキャスターが移転延期で市場関係者が困っているというが、私たちは困っていない」「時間かけてもしっかり検討してほしい」などの声もあった。 市場関係者の意見を聞いた小池知事は、「豊洲移転で決着」とする報道などを念頭に「メディアは書きたい放題だが」とくぎを刺しつつ、「AかBかという観点だけではなく、これまで育ててきた築地ブランドをどう守り、どう発展させるかを、鳥の目で決めたいと常々言ってきた」と説明。豊洲か築地かの二者択一ではなく、市場全体の持続可能性を含めて総合的に判断する姿勢を強調した。判断の時期については「いろいろと総点検の最中。材料は出揃いつつあるが直接話を聞くのも極めて重要。基本方針を定めていけるようにしたい」と述べた。 小池知事の築地訪問は1時間で終了。当初のスケジュールでは、講堂での意見聴取の後、水産仲卸売場入口付近で講堂に入れなかった市場関係者を対象に小池知事が意見を聞く時間が12分ほど設けられていたが、1分程度で終了。業者らからは「意見を聞いてくれるのではなかったのか」「あれでは何も言えない」などと不満の声が漏れていた。 (取材・文:具志堅浩二)