地中熱ヒートポンプとは何かをわかりやすく解説、知っておきたい仕組みと導入事例
日射量や風量に左右されない次世代の再生可能エネルギーとして、今「地中熱」が注目を集めています。政府は住宅や公共施設向けに普及を後押ししようとしていますが、今のところ太陽光パネルに比べて導入は進んでいません。地中熱の仕組みや課題、今後の展望などについて、大阪、愛媛、島根など実際の導入事例を交えて解説します。 【詳細な図や写真】地中熱ヒートポンプ(クローズドループ方式)のイメージ(出典:『地中熱にあたってのガイドライン(第4版)』環境省)
「地中熱」と「地熱」は別モノ!何がどう違うのか
地中熱とはその名の通り、地面の中に存在する熱エネルギーのことです。 似ている言葉に「地熱」があります。地面に穴を掘って熱エネルギーを取り出すという点では共通していますが、地中熱と地熱はまったく違う技術なので、注意が必要です。 地熱は、火山の近くにあるエネルギーを熱源として使います。地面そのものの温かさではなく、その奥の深いところにあるマグマだまりを熱源として利用します。 一方「地中熱」は、マグマだまりではなく、地面そのものの熱を利用します。 「地面そのものの熱」という言い方が、ちょっと引っ掛かるかもしれません。「単なる土のかたまりにそんなにエネルギーがあるのか?」「多少は熱エネルギーがあるのかもしれないけど、それで電力不足をまかなえるほどか?」と。 大切なのは、地面の上にある外の空気との「温度差」です。外気温については、夏は暑く、冬は寒く、季節によって激しく変動します。一方、地面のなかの温度というのは季節の影響をあまり受けません。土のかたまりは空気ほど熱を通す力がないからです。 結果的に、外気と地面の間には一定の温度差が生まれます。この温度差をエネルギーに転換することで、一日一日の天候に左右されにくいエネルギー源を確保するというわけです。たとえば夏は冷熱源として、気温が低い冬は温熱源として、効率よく冷暖房などの空調や給湯、融雪などに利用できます。
地中熱のメリット・デメリット
地熱と地中熱にはそれぞれメリット、デメリットがあります。 地熱は膨大な熱エネルギーを獲得できるかわりに、火山のまわりなど利用できる地域が限られるうえ、マグマだまりの近くまで非常に深く地面を掘り進める必要があります。 地中熱は地熱ほど大きなエネルギーを得られないものの、地面はどこにでもあるので場所を選ばないうえ、それほど深く掘らなくても利用できるというコスト面のメリットもあります。 また、環境省の調べでは、地中熱を利用する過程のエネルギー消費量は灯油ボイラーに比べて38~43%抑制できます。基本的に石油などを使わないため、CO2排出量を削減できること、エアコンのように排熱を屋外に出さないため、ヒートアイランド現象の緩和が期待できることなどもメリットとして挙げられます。 良いことづくめにもみえる地中熱。国内ではどれくらい導入が進んでいるのでしょうか。