第93回選抜高校野球 明豊、攻守で躍動 強豪・智弁学園破り4強 /大分
<センバツ甲子園> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に出場した明豊は29日、準々決勝で智弁学園(奈良)と対戦し、6―4で勝利。関西屈指の強豪校を相手に、攻守で躍動し、2019年に続く4強入りを果たした。今大会を含め3年連続で春切符をつかんだ明豊ナインだが、昨春は大会自体が中止となった。涙をのんだ先輩の思いを背負い、「日本一」が照準に入った。懸命に戦った選手たちに一塁側スタンドからは「おめでとう」「よくやった」とねぎらいの言葉と拍手が送られた。【辻本知大、中田敦子】 早くも一回に勝負が動いた。1番打者の幸がレフトスタンドに本塁打をたたき込んだ。会場からはどよめきが起こり、一塁側スタンドの明豊応援団は、「オー」という叫び声を上げ、スティックバルーンを割れんばかりにたたいた。 続く裏でも、幸がショートゴロを捕らえる好プレーを見せた。地元別府市では、中学時代から「天才ショート」と呼び声が高かった。冬の練習を超えて、打撃も強化。センバツ開幕前の練習試合でも本塁打を放ち、チームの攻守の要となった。 1回戦で乱れた京本も復調。打たせて取る投球で、三回まで被安打2、無失点に抑えた。京本は「中途半端で抑えられるチームではない。甘い球を打たれないように攻めた」と振り返った。 明豊ナインは、甲子園入りしてからも宿舎で時間を見つけては、バットを振り続けている。宿舎の駐車場で、夜遅くまで素振りに励み、打撃力の向上に余念が無い。試合は終始、明豊が攻め続けた。智弁学園のエース西村と小畠の継投に11安打と、強打が戻ってきた。三回には京本が右翼への安打で出塁。阿南の適時打と、黒木の適時二塁打で突き放した。 七回には代打の和才が二塁打を放つなど、相手投手にプレッシャーをかけ続けた。チア部のまねをしてボンボンを持って応援した妹葵結さん(9)は「ヒットを打ってくれてうれしい」と笑顔を見せた。 途中、満塁のピンチを作ったが、大会3試合を通じ無失策の堅守でリードを守り切った。昨夏のチーム発足時、川崎絢平監督は「自分が指導してきた中で、過去最弱だ」と喝を入れた。スポーツ選手としての「負けん気」を呼び起こすため、あえて厳しい言葉をぶつけた。選手たちは奮起し、今大会でも1回戦と2回戦で1点差の接戦をものにした。川崎監督は「すごくたくましくなった。甲子園の中でまだまだ成長し、もっと高みを目指してもらいたい」と目を細めた。 応援団を率いた保護者会の和才竜也会長は試合後、「(次も)絶対勝つ」と気勢を上げた。「こんなにドキドキさせてくれて最高です。日本一まであと2試合。もっとドキドキさせてほしい」。次戦は31日第2試合(午後1時40分開始予定)で中京大中京(愛知)と対戦する。 ◇先制本塁打「びっくり」 ○…幸修也主将(3年)の先制の本塁打に一塁側アルプススタンドがわいた。後列には、静かに喜びをかみ締める母・里美さん(45)の姿があった。「びっくり。夢を見ているみたい」。肩にかけたカバンには、青地に金色で「絶対勝つ!」と刺しゅうされたお守りがつけられていた。保護者会で「常に勝ち続けてほしい」という思いを込めたという。 試合終了後、グラウンドで勝利の校歌を歌う息子を眺めてこう話した。「夢の舞台に、3回も連れてきてくれてありがとう。こうなったら頂点までいこうね」 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇努力が生んだ超美技 阿南心雄左翼手=3年 2点差に追い上げられた六回裏2死一、三塁。抜ければ同点となる左越えの大飛球を全力で追いかけたが、フェンスにぶつかり、倒れ込んだ。一瞬、静寂に包まれた甲子園。グラブを突き出し捕球をアピールすると、球場から敵味方関係なく大きな拍手が起こった。チームから笑顔で迎えられ「うれしかった」とはにかんだ。 元々、遊撃手だったが、守備が苦手で昨夏に外野手に転向した。守備範囲の広い外野は50メートル6秒前半の俊足が生かせるが、慣れない守備は不安でいっぱいだった。「野球のセンスはない。下手なりに泥臭く」を信条に守備練習に明け暮れた。「人一倍努力している」とチームメートも評価する。 持ち前の泥臭さは三回表の打席にも生かされ、追い込まれてから3球目の高めの球に食らいつき、2点目の適時打を放った。「しっかりデータを分析して、打ち勝ちたい」。チーム初の決勝進出に向け闘志を燃やした。【辻本知大】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽準々決勝 明豊 102020101=6 000012010=4 智弁学園