[ハーレーカスタム車試乗] ダイナローライダー:エボリューションのテイストを残しつつハイパフォーマンス化
ハーレーダビッドソンにとって、”カスタム”は切っても切れない楽しみのひとつ。『ウィズハーレー』誌が、多くのオーナーの参考となりそうな最新カスタム車両を紹介する。今回は45DEGREES(埼玉県川口市)が仕立てた、ハイパフォーマンスな「ダイナローライダー」だ。今回は車両の紹介だけではなく、実際に乗ってのインプレッションだ。 【画像】[ハーレーカスタム車試乗] ダイナローライダー
徹底追求した足まわり。たどり着いた答えは前後17インチ化
走りを重視したハイパフォーマンスを求めるのなら、4バルブあるいはツインカムしか選択肢はないのか? そんなギモンに真っ向から立ち向かったのが、45ディグリーズ(埼玉県川口市)の齋藤氏だ。 彼が手かけたFXDLダイナローライダーは、2バルブ1カムのエボリューションエンジンを心臓部とする1994年式がベース。 しかしながら、切れ味のある軽快なステアリングフィールとパワフルかつテイスティなトルク感は、30年前の車両とは思えない。M8やTCモーターらを積むスピードクルーザーらと、互角以上のスポーティーな走りが味わえるから驚くばかりだ! まず、ファットヘッドの空冷Vツインは、T-ManパフォーマンスのヘッドとCRアクステル社の鋳鉄シリンダー、S&Sサイクルのクランクケースで排気量を102キュービックインチ(1671cc)にまでスケールアップ。カムプロフィールの見直しはもちろん、鍛造特殊鋼のローラーロッカーアームや容量アップしたオイルポンプで、各部を徹底強化している。 見た目にもインパクトがあるのは、キノコ型に2つのエレメントを剥き出しにしたS&Sチューンドインテーク。オリジナルデザインのカバーをセットし、ミクニHSR45キャブレターと組み合わせた。 また、純正5速ミッションケースをそのままに、6速クロスミッション化され、噛み合い率の高いS&S製ヘリカルギアに強度アップしているのも見逃せない。 スロットルレスポンスに優れる鋭いピックアップで、大排気量Vツインならではの鼓動感も勇ましい。バンス&ハインズの2in1集合マフラーからは、迫力のある重低音サウンドを響かせている。 プライマリーケースを含めて、すべてを耐熱塗装で仕上げ、見た目にも美しいパワートレインもさることながら、もっとも注目すべきは足まわりだ。なんと、前後17インチ化した。 齋藤氏はこう言う。 「ビックツインで走る/曲がる/止まるを思い通りにコントロールでき、なおかつハーレーらしいフィーリング&トルク感を犠牲にせず乗れるバイクを目指して、何度もカスタムし、辿り着いた結果です」 ロングライドも苦手にしないハーレーの車体構成において、フロントの17インチ化は、切れ込みを感じさせるステアリングフィールが受け入れられず敬遠されてきた。 しかし45ディグリーズでは、サスペンションチューニングによってネガを解消。アルミ鍛造ホイールやビレットスイングアームでバネ下重量を軽減したことも相まって、旋回性に優れ、切り返しもクイック、ハイグリップタイヤの選択肢も多いといった数々のメリットを獲得している。 路面状況や乗り手の体格、ライディングスタイルなどを日本仕様にしたジャパンスペックをベースに、同店オリジナルのセッティングを施し、クセのないハンドリング、優れた路面追従性とトラクションを実現しているのが、ハイパープロの前後サスペンションだ。 フット部をアルミ削り出し成形にしたAH1フォークに、転がり抵抗を徹底的になくしたSTMハイパフォーマンスベアリングを組み込み、独自のチューニングが追加されてフリクションを消し去った。走行中はもちろん押し引きしても軽く、取り回しでのメリットも大きい。 目をひくポリッシュ仕上げのスイングアームは、TRACダイナミクス製でアグレッシブな走りにライダーを導く。エボリューションの可能性を無限大に感じさせる傑作であり、このFXDLは今後も永続的に進化を続けていくのだろう。 ◆45DEGREES代表の齋藤誠治さんが、このローライダーを購入したのはおよそ30年前のこと。以来ずっとカスタムへの探究心が尽きない。現状、カスタムメニューは下記の通りで、もはや手の入っていないところはない。 ◆ツインカムエンジンに続いてミルウォーキーエイトが登場した今、エボリューションエンジンは2世代前のパワーユニットとなる。ハイパフォーマンスを求めた際、不利なことばかりかと言えばノーだ。スケールアップに伴いエンジンをチューニングし、トランスミッションも6速化。 ◆足まわりには高剛性なアルミ角断面のスイングアームまで奢られ、前後サスペンションもハイパープロを独自セッティングした折り紙付き。こうしてスポーティーな走りを追求する中で、エボならではのテイスティさを失っていないから頭が下がる。齋藤さんの探究心は尽きることがなく、今後もさらなる進化をさせていくと目を輝かせる。 ────────── カスタムメニュー ────────── エンジン:改造公認済み 排気量:102ci/1671cc シリンダーヘッド:T-Man Performance ローラーロッカーアーム:S&S/鍛造特殊鋼8620スチール ロッカーカバー:S&S/ビレットポリッシュ クランク:S&S/4-8/5(クランクポジション付き、バランスファクター調整) ※フューエルインジェクションにアップグレードも考慮 クランクケース:S&S カムシャフト:T-man Performance シリンダー:CRアクステル鋳鉄 オイルポンプ:S&S ハイボリュームポンプ 精密組み立て:オリジナルブループリンティング マフラー:VANCE&HINES 2in1 キャブレーター:ミクニHSR45 エアクリーナー:S&Sチューンドインテークキット エアクリーナーカバー:45DEGREESオリジナルデザイン トランスミッション:ケースノーマル加工 ミッションギヤ:S&S オールヘリカル6 速クロスミッション ヘッドライト:PIAA φ100レースヘッドライトユニット Hi/Lo メーター:モトガジェット モトスコーププロ ハンドル:ファットテーパーバー1-1/2マウント/ 幅加工 フロントフォーク:ハイパープロAH1 ver.1.2(45DEGREES 特別仕様) ステム:アクティブコンバーチブルステムキット グリップ:45DEGREESオリジナルアニバーサリービレットグリップブラック ミラー:CRAFTMANスプーンミラー ウィンカー:Kellermann Bullet Atto マスターシリンダー:GALE SPEED VRCオリジナル1 体タンク仕様 ブレーキキャリパー:GALE SPEEDラジアルマウント4POTキャリパー×2 ブレーキキャリパーサポート:HYPERPROラジアルマウントキャリパーサポート ブレーキローター:GALE SPEEDクロスロックφ310(別注特別仕様) フロントホイール:GALE SPEED TYPE GP1S/HP4 改 リヤホイール:GALE SPEED TYPE GP1S/GPZスプロケットキャリアカスタム リヤプーリー:オリジナルワンオフ ホイールベアリング:STM ベアリング&チューニング フロントフェンダー:45DEGREESオリジナルデザインFRP(FULL GAIN) アッパーカウル:45DEGREESオリジナルデザインFRP(FULL GAIN) フューエルタンク:45DEGREESオリジナルデザイン/スチール リヤフェンダー:45DEGREESオリジナルデザイン シートカウル&リヤフェンダーFRP:FULL GAIN チンスポイラー:45DEGREESオリジナルデザインFRP(FULL GAIN) シート:45DEGREESオリジナルデザイン(JIMMY DOPE) スイングアーム:TRAC DYNAMICS アルミポリッシュ リヤサスペンション:45DEGREES SPEC ハイパープロファット340mmピギーバック リヤブレーキキャリパー:GALE SPEEDラジアルマウントキャリパー2POT&サポート ベースペイント:アルファテック レタリング&ピンストライプ:KID KUSTOM PAINT
────────── ●文:青木タカオ(ウィズハーレー編集部) ●写真:丸山淳大 ※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ウィズハーレー編集部