11世帯集落に38年ぶり赤ちゃん 津幡・牛首地区 「山村の宝」住民喜び
●輪島出身の村田さん 津幡町の山あいにある集落・牛首地区で38年ぶりに新たな命が誕生した。古民家レストランを開業するため、同地区に移住した村田鹿(ろく)さん(35)と妻の更乃(さらの)さん(31)が6月12日に授かった次男の椛(もみじ)ちゃんだ。自然に囲まれた環境ですくすくと成長する赤ちゃんは、村田家だけでなく、わずか11世帯18人の「山村の宝」として、地域の明るい話題となっている。 【写真】椛ちゃんを抱っこする村田鹿さん=津幡町牛首地区 輪島市出身の鹿さんは2022年10月、古民家レストラン「厨鹿(くりやろく)」をオープンするため、同市から牛首地区に移り住んだ。同じく輪島市出身の更乃さんと長男東乃(とうの)さん(11)、長女佐保(さほ)さん(9)は金沢市から、23年4月に移住した。村田さん夫妻がともに新緑のモミジが好きだったことから、次男の名前に付けた。 牛首地区は石川、富山県境の山峡(やまかい)にある集落で、津幡町役場から車で約30分かかる。町によると、同地区で子どもが生まれるのは38年ぶりで、高齢者を中心とした10世帯ほどの集落での赤ちゃん誕生は珍しい。 20年にわたり、区長を務める永多憲二さん(77)は村田さん一家について「よく子どもの顔を見せに来てくれる。元気に育ち、将来も住んでくれたらうれしい」と話した。 鹿さんは高校卒業後、料理人の修行を積むため、国内外の飲食店で腕を磨いた。自分の店を持ちたいと物件を探していたところ、牛首地区で築約150年の古民家を見つけ、自らの手でレストラン仕様に改修した。 牛首地区は住民のほとんどが70歳以上で、過疎に歯止めが掛からない。それでも鹿さんは肩肘張らず、自然体でいられるところが魅力と語る。地域住民が椛ちゃんの誕生を喜び、子どもたちを温かく見守ってくれることに感謝しているという。 椛ちゃんの生誕から間もなく3カ月、だんだんと表情が豊かになってきた。鹿さんはわが子を抱きながら「大きくなったら川や海で一緒に遊びたい。元気に育ってくれることが一番だ」と健やかな成長を願った。