「知ることから始めよう」―偏見や差別をなくすために:日本人ムスリムの訴え
日本のムスリム人口は増えているが…
日本のムスリムに詳しい早稲田大学の店田廣文名誉教授(社会学)の調査によると、日本に住むムスリムは2020年時点で約23万人。「500人に1人がムスリム」となる計算で、10 年間で倍増した。このうち日本国籍を持つのは約4万7000人と推計されている。モスクの建設も全国で進み、1999年の15カ所から2024年4月時点で133カ所に増えたという。 店田名誉教授は、こうした現状を受け、結婚、出産で改宗、入信する人が増える傾向にあると指摘。最新のデータから日本のムスリム人口を「30万人に近づいているのではないか」と推測する。 東京ジャーミイでも入信式、結婚式が増えている。それに伴い、ムスリムとの結婚を巡って、改宗するかどうかの選択に悩む相談が絶えない。イスラム教への偏見によって周囲から反対され、改宗をためらうのだ。相談にはいつもこう答える。「相手を好きになって、ムスリムにならないといけないなら、なればいい。踏み切れないのは、あなたに偏見があるから。ムスリムになる前に、あなた自身がイスラム教に対する偏見をなくさないといけない」 日本のムスリム人口は拡大しているが、下山さんは01年の米同時多発テロなどを機に高まったイスラム教批判を念頭に、「バイアスのかかった欧米メディアの影響で、不幸にして日本人のイスラム教への理解は進んでいない」と嘆く。イスラム教を正しく理解し、偏見や差別をなくそうと、メディアなどあらゆる場で言葉を尽くすのは、そうした問題意識があるからだ。 偏見や差別解消のために力を発揮してくれると、下山さんが期待するのが大学生、高校生ら若い世代だ。23年に東京ジャーミイを見学、研修で訪れたのは、大学が63校、高校はおよそ100校に上った。下山さんは「大きな存在であるイスラム世界をもっと知りたいという学生、教師が増えている。イスラム世界を知らないと世界全体が分からないということに気付きつつある」と手応えを感じている。