93歳になっても「悲しみは消えないけれど」。47歳で長男を亡くした過去を振り返る
東日本大震災の被災地で、被災者の人たちの気持ちがよくわかって
辛い体験をし、一つだけメリットがあるとすれば、大切な人を亡くした悲しみが、深くわかるようになったことです。それまで看護師として、たくさんの看取りに立ち会い、一緒に涙を流したこともあったけれど、本当の意味で寄り添ってきたわけではなかったと、感じました。けれど、辛い体験をし、「変わった」と言います。 2011年の東日本大震災のとき、被災地の支援に入りました。被災者の方々から「あなたは、わかっていない」と言われたそう。大切な人、財産、家を亡くした悲しみが、経験していないあなたにはわからないと。川嶋さんには、その方々の気持ちが痛いほどわかりました。「私も長男を亡くしたから、わかるわ」と言葉では言わなかったけれど、そういう思いで背中をさすり、黙って話を聞いたそうです。
辛い思いをしている方には、声のかけ方は難しい
辛い思いをしている方は、どんな声をかけ方を川嶋さんはしているのでしょうか。 「声をかけて喜ばれる人もいるし、そうじゃない人もいる。あるとき、講演で私の話を聞いた方から『お子さんは何人ですか?』と聞かれました。『2人です』と答えたら、『じゃあ、よかったですね』と言われました。その方は、私を励ますつもりで言ってくれたのだと思いますが、心臓に釘を刺されたように辛かった。『子どもが何人いようとみんな同じくらい大切なのよ』って」 だから、声のかけ方はとても難しい。正解はありません。言葉はかけずに、黙って話を聞くだけのほうがいいのかなと思うことも。川嶋さんは自身の体験を踏まえ、言葉をかけるときは、気をつけているようにしていると言います。
ESSEonline編集部