混迷続くウクライナ 大国の思惑と経済再建 ── 立正大・蓮見教授に聞く
経済再建のため 対露関係は慎重に
ウクライナのマーケットは潜在的に大きい。当面は、ヨーロッパの工場となったポーランド型を目指すしかない。まずは外資を入れ、雇用を生み出し、国境を越えた国際分業に参加すべきだ。外資を呼び込むためには政治的安定が求められる。EUやIMFからの金融支援がある間に、政治腐敗を是正し、経済を立て直すべきだ。だが、新政権にその力があるかどうか疑問が残る。 ロシアは有力な輸出先であり、またエネルギー供給国でもある。ウクライナ経済再建のためにも、暫定政権は、たとえロシアの事実上のクリミア支配が続いたとしても、右派セクターの意向に左右されずロシアとの経済的な友好関係を構築すべきだ。 また、IMFの求めるコンディショナリティ(融資実行の財政条件)には、GDPの7%にも及ぶ補助金によって安く抑えられてきた国内向けガス価格を2倍に引き上げ、緊縮財政を進めるといった構造改革の推進が含まれるだろう。一連の経済改革がもたらす負担に、ウクライナ国民が耐えられるかも重要になってくる。 ------- 蓮見 雄(はすみ・ゆう) 立正大学経済学部教授、ユーラシア研究所事務局長、公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)共同研究員、ジャンモネEU研究センター(慶應義塾大学)研究員。1960年生まれ。専門はEU経済。『エコノミスト』への寄稿や、「琥珀の都カリーニングラード」(東洋書店)をはじめとした著書も多い。近著は、「グローバル・パワーシフトと日ロ経済協力」(『ユーラシア研究』 東洋書店 2013年)。