「依存と強制」から「自立」へ――“学校と社会の違い”を教えると若手が伸びるワケ
同じ方向の「黒板」を見るのは学生までなんです
「学生と社会人の違い」の2つ目は“方向”です。 学校は、協調性を育むために合唱祭や体育祭で共通の目標に向かったり、円滑に学びを付与するために、同じ方向を見て校長先生の話を聞いたり、一つの黒板に向かって授業を受けたりします。 しかし社会人になると、同じ方向を見て学ぶのは卒業。 ふと旅行先でビジネスアイデアが浮かんだり、何気なく手に取った書籍が羅針盤になったり、異業種の職人の言葉が自分を突き動かす金言になったりするもの。 そう、各自のマインドや視点で“どの方角に向かい、何を黒板にするかは自由”ですし、その縦横無尽さが社会人生活の醍醐味とも言えますよね。 その思考の腑分けを伝えたうえで、こんなふうに補足します。 「僕が言ってることなんて、成長へのアプローチ法にすぎんよ。どこへ出かけ、何を教師にするかは皆さんしだい。自分なりの黒板と教科書を見つけてください」と。 そういった僕の言葉を、NSC卒業後も授業のアシスタントを務め、間近で聞いていた芸人がいました。 彼は日体大卒でバリバリの体育会系だったのですが、これまでの人生とは180度違う「デジタル分野」を黒板にして、当時最先端だったセグウェイに乗ってネタをしたり、いち早くインスタグラム投稿を分析し、2カ月でフォロワーを30万人増やしたりしました。 彼の名は、おばたのお兄さん。彼は今でも、持ち前の運動神経を芸の基盤にしつつ、ミュージカル、育児、エクササイズなど、華麗な方向感覚で活躍を続けています。 よく「やる気スイッチ」という言葉を聞きますが、たしかにスイッチは若者自身に内蔵されているでしょう。加えて僕の知見だと、そのスイッチに電力を送るのは、間違いなく大人だということです。 ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。 桝本 壮志/Soushi Masumoto 1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。
COMPOSITION=古澤誠一郎 TEXT=桝本壮志