不安に押しつぶされそうな人へ...「脳の仕組み」を理解して心を落ち着ける1つの方法
自分の「不安の度合い」を把握する
「不安の度合い」が強すぎると、思考停止、行動停止、感情停止してしまいます。これは脳の防衛本能ですから、反応自体を止めることは難しいです。ですが、「不安の度合い」自体は、ある程度コントロールすることができます。 不安の度合いは、大きく3つに分類することができます。 コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンの3つです。 コンフォートゾーンとは、安心安全、いつも通りなので、心地いい状態です。要するに、ほとんど不安を感じない状態のことです。 しかし、コンフォートゾーンでは、成長できません。挑戦しないので失敗することも恥をかくこともない代わりに、進歩、成長、発見、発展、気づきなどもほとんどないのです。ある意味で、ぬるま湯状態です。 ラーニングゾーンとは、適度な不安状態のことをいいます。つまり不安と期待が適度に入り混じっている状態です。例えば、異動、転職、引っ越し、結婚、家族関係の変化など、今までとは違う新しい環境になると、コンフォートゾーンの外側にある「ラーニングゾーン」に移行します。 実は、学び、成長、気づき、新しい出会い、ご縁の深まりといったことは「ラーニングゾーン」にいるときに得やすいのです。 パニックゾーンとは、不安が強すぎて、本来の力を発揮するのが難しい状態です。過大な負荷をかけ続けると、ラーニングゾーンの外側にある「パニックゾーン」に移行します。 自分にとって、難しすぎること・苦手すぎること・新しすぎることに立て続けに挑戦したり、対応せざるをえなくなったときに起こりがちです。 あるいは、ありえない事態などに遭遇すると、人はパニック状態になります。択一になってしまいます。つまり、思考停止、行動停止、感情停止してしまうのです。
紙に書き出し、対策を冷静に考える
パニックゾーンに陥ってしまったときに知っておいてほしいこと。それは、「不安は、否定したり隠したりすると増幅する」ということです。 不安への対処の仕方を間違えると、さらに不安が増幅したり、不安に飲み込まれてしまったりと、ちょっとやっかいなことが起こります。 ですが、不安は正面から向き合うと、希望や勇気、行動する力に変えることができます。正面から向き合うなんて大変そう......、そう思った方も安心してください。必要なのは紙1枚とペンだけ。しかも、やることは次の2つだけです。 【不安を紙に書き出す2ステップ】 ・ステップ1 紙の左半分に「不安に感じていること」を箇条書きですべて書き出す。 ・ステップ2 書き出したものを眺めて深呼吸。紙の右半分に1つずつ対策や今できることを書いていく。 これだけです。不安解消のためには、いきなり動くことはおすすめしません。というのも、その場しのぎや、行き当たりばったりで動くと、ますます不安になってしまうことが多いからです。 ですから、不安を感じているときは、まずは不安を書き出して一呼吸おく。そして、対策を書き出してみることをおすすめします。冷静になって考えることができれば、どんな不安に対しても対策は無数に考えられます。 まずは、「いま抱えている不安をすべて書き出す」。そこから始めてみてください。 実際にやってみるときの参考として、私が主宰するオンラインサロンメンバーのKさんが実際に書いたメモをご紹介します(まず●で始まる「不安に感じていること」にざっと目を通して、その後で→で始まる「対策=今できること」を読んでみてください)。 ●会社が潰れたらどうしよう →転職サイトに登録する →会社がなくなったとしても通用する技術を身につける →社外の人脈を築くために勉強会に参加する →専門知識を身につけるために任意の研修を受ける ●家族を養っていけるのか →貯金がいくらあるのか確認する →1ヶ月家族4人で生活するのに必要な金額を確認する →現在の貯金で何ヶ月生活できるか確認する →節約できることがないかパートナーと話し合う →いざというとき助けてもらえそうな人をリストアップする ●転職先を見つけることができるのか →転職サイトに登録する →転職した元先輩とランチのアポを取る →今の業界から別の業界に転職した人がいないか調べる →恩師に相談する ●子どもが不登校気味なのが気になる →不登校についてネットで情報収集する →担任や学年主任、校長に相談できないか検討する →子どもに合ったフリースクールを調べる →子どもをフリースクールに通わせている知人にアドバイスをもらう →転校、引っ越しの可能性を考える ●家のローンは払っていけるのか →万一払えなくなったときに使える制度を調べる →猶予の制度がないか調べる →もしいま売却したらどれくらいローンが残るのか調べる →借り換えを検討する ●頭痛がひどいが、悪い病気かも →健康診断を受ける →かかりつけ医に相談する →最近食べたもの、飲んだものを確認する →自宅や会社の環境に原因がないか確認する ●旅行の予約をキャンセルするか迷う →キャンセル可能期間を確認する →最終決断をいつまでにすればいいか確認する →最大のリスクは何か、最大のメリットは何か確認する ●同僚が咳をしているのが気になる →病院に行くことをすすめる →社内の換気をマメにする →早寝早起きして自分の免疫力を上げる →同僚の仕事で手伝えるものがあれば引き受ける ●自分の人生このままでいいのか →本当はどうしたいのか考える →このまま行った場合どうなるのかシミュレーションする →本を読む →信頼できる人に相談する 「不安に感じていること」だけを最初見たときは、Kさんでなくても「これは大変だな......」と少し不安な気持ちになったのではないでしょうか。 でも、「対策=今できること」を読んでいくうちに、「どんな不安に対しても、打つ手はいろいろとあるんだな」と思ったはずです。 Kさんも、「不安を書き出すことで客観視できて冷静になれたうえに、やるべきことが明確になり元気が湧いてきました」とスッキリした表情で変化を教えてくれました。 こうしてパニックゾーンから抜け出せたら、不安というエネルギーを前に進むエネルギーとして活用してください。つまり、ラーニングゾーンで適度な不安を感じながら、日々行動していくのです。
大平信孝(メンタルコーチ)