ワンコインランチとコロナ禍特需で低迷期を脱したケンタッキーの未来は明るいのか? 優良企業を虎視眈々と狙う投資ファンドによる株式売却の絵図
ロッテリアを買収したゼンショーの子会社化もありえるか
カーライルはケンタッキーの買収に1300億円を投じる見込みだ。金額が大きいことから、再上場を狙うのは間違いなさそうだ。 ポイントは再上場を果たした後だ。継続保有した株式を別の会社に譲渡する未来が見えてくる。前例が居酒屋「はなの舞」を運営するチムニーの買収だ。カーライルは2010年にチムニー株に約45%のプレミアムをのせてTOBによる非上場化を行った。チムニーは2012年12月に再上場している。 およそ1年後、カーライルは上場後も保有していたチムニーの株式47.97%を酒販大手・やまやに140億円で売却したのだ。チムニーはカーライルの買収を経て、やまやの連結子会社となっている。 ケンタッキーも再上場後に同様の売却劇が繰り広げられるのではないだろうか。 再上場後のカーライルからの有力な買い手候補として、2社が思い浮かぶ。ゼンショーとコロワイドだ。 ゼンショーは2023年2月に「ロッテリア」を買収した。ハンバーガー市場へと本格参入したのだ。富士経済によると、2023年のハンバーガーの市場規模は9811億円。2024年は1兆418億円まで拡大する見込みだ(「ファーストフードをはじめとする外食市場を調査」)。 牛丼は5000億円ほどで、その半分にも満たない。ハンバーガーは外食企業にとって魅力的な市場なのである。「牛角」などを運営するコロワイドも2016年に「フレッシュネスバーガー」を買収していた。コロワイドは「大戸屋」を買収するなど、日常食への進出を強化している。状況はゼンショーとよく似ているのだ。 番狂わせとなりそうなのが、「鳥貴族」を運営するエターナルホスピタリティグループ(2024年5月1日に鳥貴族ホールディングスから社名変更)だ。 鳥貴族はコロナ禍の2021年8月にハンバーガーショップ「トリキバーガー」の1号店をオープンしていた。鳥貴族は自前で日常食への進出を果たしたのである。しかし、このブランドは苦戦している。まだまだハンバーガーショップ成功の夢は捨てられないはずだ。 本業が焼き鳥業態であることからも、ケンタッキーとのシナジー効果は高そうだ。 ケンタッキーのカーライル買収は、外食企業の未来を大きく変えるポテンシャルを秘めている。 取材・文/不破聡
不破聡