日本の首相は「コロコロ変わって弱い」から「一強」へ。そしてまた「弱く」なった
「安倍一強」などと首相への権力集中が言われたのも今や昔。少数与党を率い、30年ぶりの決選投票でかろうじて選出された石破茂首相は、党内基盤の弱さも指摘され、「一強」とはほど遠い状態だ。そのせいか、外遊先での立ち居振る舞いがSNSで批判の対象となっている。 政治学者で上智大学国際教養学部教授を務める中野晃一氏は、自身が監修した『ざっくりわかる 8コマ日本の政治』に「日本の首相の力は強いの?弱いの?」と題したコラムを掲載。そもそも日本の首相は、コロコロ代わることもあって「弱い」と言われてきた、と指摘している。 本の発売を記念して、コラムの全文に最新の分析を追加して配信したい。 *** 日本の首相はコロコロ代わり、弱いということがいわれてきました。確かにかつて「竹下派支配」といわれたりした時代(1987~92年)など、リクルート事件で首相を辞任した竹下登元首相の率いる最大派閥が政治の実権を握り、宇野宗佑、海部俊樹、宮沢喜一と首相を決めていました。 与党内では派閥の「数の力」がモノをいい、政府内では各省庁の官僚が公共事業や農業など特定の政策分野に影響力を持つ「族議員」と一緒になって政策調整や利権配分を行い、ボス間の采配や取引で物事が決まっていたのです。 これでは首相が大胆にリーダーシップを発揮できないと、冷戦終盤期以降、行政改革が推し進められ、首相官邸の機能強化がなされていきました。中央省庁の再編の一環として内閣機能の強化がなされ、経済財政諮問会議など首相主導の意思決定システムも整備されました。 これに伴い、首相の補佐役である官房長官ポストも従来以上に重要な政府の最大のかなめになりました。何よりも決定的だったのは、小選挙区制や政党助成制度の導入という政治改革によって、自民党内の政治力学が変化し、公認権やカネの流れを掌握した総裁や幹事長が相対的に各派閥のボスに対して有利になり、与党内の中央集権化が進んだことです。