「周りを笑顔にする」さくらジャパン・及川栞の笑顔と健康美の原点。キャリア最大の逆境乗り越えた“伝える”力
海外で直面したキャリア最大の逆境
――2016年から3シーズン、最高峰のオランダでプレーし、19、22年はオーストラリアのリーグに期限付き移籍もされました。海外でプレーすることの醍醐味はどんなことだと思いますか? 及川:一アスリートとして、競技のスキルの引き出しが増えることはもちろんですが、文化も言葉も違う場所で一人で生きていくことで、メンタルの強さや柔軟性が養われます。自分が思っていること、考えていることが日本語のようにスムーズには通じないし、その場所で生きていくためには自分で問題を解決しないといけない。生きるか死ぬかの瀬戸際で日々試行錯誤しながら、一人の人間として生き抜くための柔軟性が身について、人間味も増していくんじゃないかと思います。 ――その中でも、及川選手にとってキャリア最大の逆境はどんなことでしたか? 及川:「言葉が通じないことがこんなにもつらいのか」ということは、現地で痛感した壁でした。そのことで落ち込んでも、周りの助けを待っているだけでは何に苦悩しているのかが周りに伝わらないので、葛藤しました。その時は、「いつもと様子が違うし、調子おかしいね」と言って支えてくれたチームメイトがいたことが大きかったですし、チームメイトに自分から思いを伝える大切さを身に沁みて感じました。 ――気持ちを正直に打ち明けて、周囲も変わっていったんですか? 及川:そうです。最初は、「言葉が通じないことが悔しい」と、自分からは言いたくなかったんです。でも、寄り添ってくれたチームメートに対して、「伝えることによって何かが変わるかもしれない」と思って、泣きながらしゃべったんですよ。「自分が伝えたいことがあって、もっと英語を話したいし、伝えたい」と。そうしたら、次の日から周りが変わっていってくれて。「しー(愛称)に対しては簡単な単語で伝えてあげよう」と、チームのみんなが意識してくれるようになったんです。自分が思うことを伝えたり、相談することは勇気がいることですが、思い切って相談すれば、助けたいと思ってくれる人たちが助けてくれる。自分も同じ立場の人に会ったらそうしたいと思ったし、それが海外でコミュニケーションを取る上では大切なことだと学びました。 ――オーストラリアでは「ほほえみの暗殺者」「磁石のようなディフェンダー」と呼ばれていたそうですが、選手としては、そんなふうに評されるのはどんな思いですか? 及川:最初に聞いた時はすごい表現だな、とびっくりしました(笑)。ただ、それほどオーストラリアでも嫌がられている守備が私の強みなんだなと、改めて実感しました。