広島の記念Tシャツが迅速に商品化される背景とは 達成試合翌日には発売 選手とファンをつなぐ架け橋
広島はシーズン中、節目の記録達成時やサヨナラ打を放った選手の記念Tシャツを試合翌日には発売することが恒例となっている。迅速な商品化が可能になっている裏側、そしてTシャツデザインに込められた背景に迫った。 カープは今季も劇的なサヨナラ勝ちや投手陣の偉大な記録などで勝利を積み上げてきた。開幕からここまで、節目の記録をモチーフにしたTシャツは24枚を数える。8月14日・DeNA戦では菊池がサヨナラ本塁打を放ち、球団は翌15日に記念Tシャツ発売の概要を発表した。 限られた時間内で商品の全体像を決める過程について担当者は「翌朝からデザインを始めて昼頃に固まります。5、6枚のデザインから選ぶイメージ」と説明。サヨナラ打の場合は数量限定での販売となり、翌々日の午前、もしくは正午から通信販売やマツダスタジアムグッズショップで受け付けている。 デザインが決まると委託している外部の工場へ発注。そこから約1週間をメドに球団へ納品されて、順次配送となる。 プロ初勝利、初完封、サヨナラ打はもちろんのこと、珍しい記録も商品化されることが多い。今季は森浦が6月1日・ソフトバンク戦で、森下が7月2日・阪神戦で3者連続3球三振、通称「イマキュレートイニング」を達成。いずれもTシャツとして発売された。22年の開幕戦で末包がプロ初スタメンで猛打賞、初打点を記録した際には末包の愛称・ジャンボをモチーフに“初づくしジャンボ”というユーモアにあふれた文字が並んだ。 入団からさまざまな金字塔を打ち立て、ここまで計9枚のTシャツが発売されている栗林は「僕たちリリーフ投手は、野手のようにサヨナラ安打や先発投手のような完封があるわけではない。そういう中で作ってもらえるのは、うれしいこと」と話した。 特に記憶に残っているのは、21年にプロ野球新記録の新人の10試合連続セーブ達成を記念した一枚。「みんなのコメントが入っていて、今までと違った感じで印象に残っている」と明かした。 過去には斬新な企画もあった。新井監督が現役だった16年。通算2000安打まで残り25本となった段階で、安打を一本打つたびに全25種類のTシャツが発売された。指揮官は「ファンの方が『次はどんなデザインになるのかな』と、喜んでくれていると聞いていた。ファンの人が喜んでくれているのが、うれしいよね」と振り返った。 選手の足跡を形として残し、ファンと共有する企画。担当者は言う。「ファンの方が感じていることを僕たちも感じていて、それをタイムリーに提供してさらに盛り上げてもらう。コミュニケーションの一部だと思っています。ずっと買ってくれている方もおられますし、Tシャツを通じての“会話”というのを大事にしていきたい」。一枚のTシャツは選手とファンをつなぐ架け橋。これからもカープに唯一無二の彩りを加えていく。(デイリースポーツ・向亮祐)