契約社員で「基本給20万円」だけど、「交通費」や「食事手当」の支給は“契約条件”によるの? 賞与や退職金についても解説
正社員と非正規社員(パートタイム・有期雇用労働者・派遣労働者など)の待遇にさまざまな差があっても「その条件で契約した以上は仕方がない」と考える人は多いようです。 しかし、正規・非正規社員の不合理な待遇差の解消は、国の政策として進められています。いわゆる「同一労働同一賃金」です。 「契約だから仕方がない」という考え方には根本的な誤解があります。労働法の基本に立ち返って、この問題について解説します。 ▼勤続20年でも年収は「280万円」貯蓄も「30万円」しかないのは少なすぎ!? 転職したほうが良いの?
労働契約は労働法の基準に従う必要がある
従業員は会社と労働契約を結んで働き賃金を得ますが、この労働契約の内容は従業員と会社が合意して決めます。 しかし、会社と従業員では交渉力に違いがあり、従業員の健康や安全確保を図る必要もあります。そのため、当事者間で結ぶ契約内容に国は干渉しない「契約自由の原則」を変更し、労働基準法などの法令で、労働契約で守るべき労働条件の最低基準を国が定めているのです。 たとえ会社と従業員の間で合意していても、この最低基準に反することはできません。契約の合意に優先するもので「強行規定」と言われます。
「同一労働同一賃金」は国の重要政策
わが国は「少子高齢化に伴う生産年齢人口減少」「働く人々のニーズの多様化」などの課題に直面しています。この対応として、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくり、働く人の個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す必要があります。 働き方改革の「同一労働同一賃金」は、同一企業内の正社員と非正規社員(パート、有期労働者、派遣社員など)との間の不合理な待遇差をなくそう、という国の政策です。 どのような雇用形態を選んでも待遇に納得して働けるようにすれば、多様で柔軟な働き方を選択できるようになります。国の政策として「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を目指しているのです。
「公正な待遇の確保」のため労働契約は制限を受ける
同一企業内の正社員とパート・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与など含むあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。派遣社員についても、同様の規制が定められています。会社と従業員が合意しても「不合理な待遇差」は許されないのです。 「不合理な待遇差の禁止」には「均衡待遇」「均等待遇」という2通りの定めがあります。 ■均衡待遇(パートタイム・有期雇用労働法第8条) 待遇ごとに、その性質・目的に照らして、 1.職務内容(業務の内容+責任の範囲) 2.職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組み、例えば職務の変更・転勤の有無等) 3.その他の事情 のうち適切と認められる事情を考慮した上で、不合理な待遇差を禁止する。 正社員と非正規社員との間でバランスのとれた待遇にしなさい、ということです。通勤交通費や食事手当等は分かりやすい例でしょう。後で具体的な指導例を説明します。これに違反する待遇差は無効となり、損害賠償が認められます。もっとも、個別事案による合理的な待遇差は認められます。 ■均等待遇(同法9条) 正社員と非正規社員で「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」が同じなら、パート・有期雇用労働者を理由とした差別的取扱いは禁止されます。同一待遇にしなければなりません。