契約社員で「基本給20万円」だけど、「交通費」や「食事手当」の支給は“契約条件”によるの? 賞与や退職金についても解説
「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の実現」は着々と進んでいる
公正な待遇の確保は着々と進んでいます。令和4年12月から令和5年11月までの1年間で労働基準監督署は約3万9000件の事実を確認、約8000件の報告徴収を受け労働局長の指導助言が行われています(図表1)。 図表1
厚生労働省 同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組の実施状況 今後は「基本給・賞与の差の根拠の説明が不十分な企業について、文書指導を行い経営者に対応を求める」という方針も明確にされています。具体的な指導の事例をいくつか紹介します。 ■通勤手当 <是正前の待遇> 正社員には実費支給、有期は1日あたり定額支給。 <待遇差の理由> 有期は近隣からの通勤者が多く、通勤費用があまりかからないため(実際は遠方からの通勤者で自己負担している者もいる)。 <指導の内容> 正社員と同一基準で支給するよう指導・是正。労働契約の期間の定め有無で通勤費用が異なるものではない。同一水準で支給しないのは不合理な待遇差である。 ■食事手当 <是正前の待遇> 正社員とフルタイム有期には支給、パートには支給していない。 <待遇差の理由> 1日一定時間以上勤務する者を対象、パートはその時間数に満たない(実際は昼食時間を挟んで勤務するパートもいる)。 <指導の内容> 労働時間の途中に昼食休憩時間があるパートに、正社員と同一支給とするよう指導・是正。 食費の負担補助の目的から、食事をとる必要は正社員も短時間パートも同じ。所定労働時間が短いことを理由とするのは不合理な待遇差である。 ■基本給や賞与など 基本給や賞与は、諸般の事情を考慮して決定されるので「不合理な待遇差」とまでいえない場合も多いのですが、待遇差を客観的に確認分析して検討し直すように、といった個別の指導が行われています。
不合理な待遇差の解消を目指そう
同一労働同一賃金ガイドラインでは、正規・非正規の不合理な待遇差を解消し「多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から『非正規』という言葉を一掃することを目指す。」とまで記載され、国も後押ししています。 「契約条件だから仕方ない」という固定観念は捨てましょう。おかしいと思えば、まず会社に相談し説明を求めましょう。会社には相談・説明に応じる義務が定められています。 出典 e-Gov法令検索 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法) 厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法のあらまし 厚生労働省 同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組の実施状況 執筆者:玉上信明 社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ファイナンシャルフィールド編集部