「ライバルより1円でも安く売る」か、「値引き・安売りはしない」か?中小企業の「会社をつぶさない」選択
---------- ライバルより1円でも安く売ったほうがいいのか、それとも値引き・安売りはしないほうがいいのか……。あなたはどちらが正解だと思うだろうか? 間違えると取り返しのつかないことになりかねないこの難問に、著書に『会社をつぶさない社長の選択』がある税理士の松岡靖浩氏が答えを出す。 ---------- 【写真】飲食店経営に手を出したら、その先には「地獄」が待っている
価格競争に巻き込まれてはいけない
私のクライアントの中に、「他社で同じレベルの商品が1万円で売られていたら、うちは必ず1万1000円で売る」と言う社長がいます。 意味がわからなかったため「その1000円はなんですか?」と聞いたら、「決まってるだろ、それはうちのブランドとしての金額だ」と言うので、「なるほど」と納得してしまいました。 その社長が言うには、他社で1万円で売っているところを9900円にするから価格競争に巻き込まれるのだそうです。 一度価格競争に入ってしまうと、今度は9800円、9700円、9600円……となっていき、どんどん会社としての体力を弱めていってしまいます。 だから「うちは1万1000円から動かない」。その代わり、「他社と何が違うのか」、ここをひたすらアピールして販売する。安売りに動じないというのは大切という話で、すごいなと感心してしまいました。 たしかに安売りをして粗利益がとれなくなってしまうと会社の体力はなくなり、最終的にはつぶれてしまいます。 何より問題なのは、安値で販売していると高く売るためのブランドのポジションがとれなくなるという点です。一旦安売りのイメージがついてしまうと、そのイメージはなかなか払拭できません。
「安売り」は客層にも大きく影響する
価格競争に巻き込まれると資本力の勝負になるため、大手企業に勝つことはできません。ですから、中小企業は安売りを選ぶのではなく、生き残る術として、工夫して高く売らなければならないのです。 また、安売りは客層にも大きく影響します。 高級居酒屋を経営しているとある会社の例をご紹介しましょう。その居酒屋の客単価は5000円程度で、カップルのデートや接待で使われることが多いお店です。 今は客単価も安定し、うまく回っていますが、開店当初はどちらかと言うとサラリーマンや現場仕事の方が多く来店しており、売上も芳しくありませんでした。 明らかにコンセプトと客層が乖離していたため、社長も「どうしたものか……」とずいぶん頭を悩ませた様子で、「なんとかなりませんか?」と相談にやってきたのです。 データを見せてもらうと、お客様のほとんどが串盛りを一つ頼み、あとは瓶ビール1、2本で何時間もダラダラと飲んでいるという事実が浮き彫りになりました。 ちなみにその串盛り、かなりボリュームがあって、しかも価格はリーズナブル。近くに大衆向けの焼き鳥居酒屋があり、負けないようにと作られた目玉商品でした。