なぜラグビーW杯で日本はアイルランドから歴史的1勝を挙げることができたのか?
夕焼け空が徐々に夜空に変わる静岡のエコパスタジアム。スタンドはほぼ赤と緑で埋まり、公式発表された入場者数は「47813人」にのぼった。 ラストワンプレー。 9月28日、日本代表はアイルランド代表に19―12でリードしていた。開幕前に世界ランク1位(現在2位)にもなった優勝候補のアイルランド代表は、負けているのに球をタッチラインの外へ蹴った。 場所は自陣ゴールエリア。リスクを冒して逆転勝利を狙うより、7点差以内の敗北で得られる勝ち点1の確保を目指したのだ。要は、それだけ日本代表が脅威に映ったということ。蹴った本人、スタンドオフのジョーイ・カーベリーは言う。 「圧力を受けていたので、蹴りだしました」 ノーサイド。アイルランド代表は茫然自失。スタンドは地鳴りのような叫び声に包まれた。控え選手も芝に飛び出してきた日本代表は、勝ち点4を獲得。累計勝ち点を9として5チーム中暫定1位に躍り出た。何とか勝ち点1を獲得して累計6に伸ばしたアイルランド代表は2位で、開幕戦で制したロシア代表、欧州6強の一角であるスコットランド代表は、いまだに0。日本代表は、目標とする初の8強入り(予選プール2位以内)に大きく近づいた。 初戦からのゲーム間隔は日本代表の7日間に対してアイルランド代表は5日間。最高気温28度と欧州にない蒸し暑さも試合内容に影響したのか。試合終盤のリロード(倒れてから起き上がるスピード)では日本代表が上回った。 さらにアイルランド代表は、世界最高の司令塔とされるジョナサン・セクストンが欠場していた。しかし、敗軍陣営は「ノーエクスキューズ」とする。 ジョー・シュミットヘッドコーチ(HC)は、かねてより日本代表選手の特長を列挙し警戒心をあらわにし侮る様子は決してなかった。 ジェイミー・ジョセフHCは「我々はこの試合に向け3年間、準備してきた。アドバンテージはあったと思います」。対するスクラムハーフ、コナー・マレーは、日本のメディアからの「油断はあった?」との問いに「ノー!」と返した。 「(試合の間隔が短いなかでも)ちゃんとリカバリーとトーニングもできていた。言い訳はしません」 前半30分から出場のリーチ マイケル主将は、こう胸を張った。 「いやぁ…。ずっと前から強い日本を見せると言って来て、よくできたと思っています」