なぜラグビーW杯で日本はアイルランドから歴史的1勝を挙げることができたのか?
我慢で掴んだ歴史的な1勝だった。前半に相手のパント攻撃から2トライを喫したが、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝くフッカーの堀江翔太曰く「崩される感じではなかった。もう一回やり直そう、という感じでした」。事実、失点に至るまでの防御には粘りがあり、向こうのお家芸たるフィジカル勝負へも鋭いタックルで対抗していた。 序盤にグラウンド中盤右のラインアウトから自陣左を深く破られたが、大きく駆け戻った堀江が強烈なタックルで流れをせき止める。次の瞬間には、起き上がって防御網へ入り、さらに迫ってくるランナーにぶっ刺さる。落球を誘う。ドレッドヘアの33歳は淡々としていた。 「僕の仕事を、やっただけなんで」 日本代表の防御は時間が経つほど威力を発揮した。自陣に差し込まれながら、ライン全体で一気に飛び出し緑の波を跳ね返す。そのたびに歓声が湧く。 強烈なタックルをお見舞いし続けたフランカーのリーチは、当初のプランでは、終盤からの投入でインパクトを示す予定だったが、ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィのアクシデントによって前半30分に登場していた。ゲーム主将だったフランカーのピーター・ラブスカフニとともに、ボールへの絡みでも際立った。38歳のロック、トンプソン ルークもその出足で向こうの巨漢を仰向けにした。特に、相手がタッチライン際から中央へパスを折り返す時、日本代表の防御がせり上がった。 敗れたマレーの述懐。 「日本代表の防御のラインスピードが速く、コリジョン(衝突)で押されて勢いを失い、エラーをしてしまっていた」 同じフランカーの姫野和樹は、16―12のスコアで迎えた後半24分頃に自陣ゴール前でのジャッカルで相手のノット・リリース・ザ・ボール(倒れた選手がボールを手放さない反則)を誘う。目の上にあざを作ったまま、破顔した。 「ピンチを救いたい気持ちでがむしゃらにボールに絡んで行っていました。あの流れ、あの時間帯で決められたのは、かなりチームにとって大きかったと思います。きょうはプレッシャーを楽しめる余裕があったので。楽しい、と、自然と笑顔がこみあげてきました」