田中貴金属工業が成膜装置部材からの貴金属回収で新手法確立。ニッケルめっき活用
TANAKAホールディングスは23日、田中貴金属工業が、真空成膜装置部材に付着した貴金属の新たな回収方法「TANAKAグリーンシールド」を確立したと発表した。半導体の製造工程などで使用される真空成膜装置部材の防着板にニッケルめっき加工を施すことが特長で、ニッケルめっき加工された防着板は容易にプラチナやパラジウムなどの白金族金属(PGM)スパッタ膜の剥離を行うことができる。2025年までに多種多様な形状・サイズの部材に対応可能な体制を整え、PGM膜の剥離回収量を現状の6倍に拡大することを目指す。 同社では、スパッタリング装置・真空蒸着装置など、主にステンレス製の真空成膜装置部材に付着したスパッタ膜を剥離して貴金属を回収精製し、回収した貴金属と精密洗浄した部材を顧客に返却するリサイクルビジネスを展開している。新たに確立した洗浄法では、独自技術である下地めっきのノウハウを活用し、防着板にニッケルめっき加工することで基材を傷つけることなく、化学的処理でPGMスパッタ膜を剥離できる。従来工程よりも容易にPGMスパッタ膜を剥離できるようになり、洗浄剤の使用量減少や環境負荷低減への貢献が期待できる。さらに研磨時の飛散による貴金属の回収ロス低減も見込まれるため、高い回収率と低コスト化も見込める。 真空成膜装置部材の治具洗浄方法には、物理剥離やアルミニウム溶射下地成膜などの方法がある。物理剥離は研磨剤を吹き付けることで付着膜を削り取る方法で、低コストなため、現在主流の洗浄方法だが、研磨剤による基材表面へのダメージが基材のライフサイクル低下につながることに加え、飛散による地金回収ロスの発生というデメリットがある。アルミ溶射下地成膜による洗浄は、防着板にアルミを溶射法でコーティングし、薬液でアルミを溶解することで付着膜を剥離する方法だが、アルミの非成膜面の付着膜回収が困難であるほか、アルミ成膜費用が高価というデメリットがある。