子供の「自信」を高める「ライトハウス・ペアレンツ」のススメ──どっしり構え、ときに「何もしない」子育て
ときにストレスフルで、親のメンタルをボロボロに傷つける、子育て。あれこれと口を出したくなる心を抑えて、あえて「何もしない」が正解なときもある。子供のためにも、親自身のためにも、だ。 12歳でニューヨーク大学に進学、天才少年の父が語る「子育て」のコツ 息子がまだよちよち歩きをしていた頃、彼はよく家の前の私道を走っては転ぶのを繰り返していた。そして、転んだ息子はいつも私の方を振り向いて、自分が怪我をしたかどうか確認しようとした。 そのとき私が心配そうな顔をしたり、ハッと息をのんだりすると、息子は声を出して泣きはじめる。しかし、私が平静を保っていると、そのまま立ち上がってまた走り出す。自分が息子の精神状態にそれほどまでに強い影響を与えられると知った、驚きの瞬間だった。 目の前にいるのは、靴紐の結び方やアルファベットの覚え方ばかりか、世界をどのように理解し、どのように感じるかまで私に頼っている人間なのだ。 それから数年後、息子が中学生になった頃に再び同じ学びを得ることになった。ある晩、宿題をしていた息子は、自分に意地悪をする同級生がいると打ち明けた。 それに対して私の本能は、「すぐに何とかしなければ」と動き出した。同級生の親にメールをしようか、学校に電話をして何らかのアクションを要求するべきか(私がこの学校の校長であったことを考えると、担任の先生に電話するのは少々厄介なことになるが……)。しかし私は、そのどれもせずに息子にこう尋ねた。「それはつらいね。それで、どうしたの?」 「その子とは、しばらく一緒にいないことにした。昼休みにはサッカーでもしようと思ってる」と息子は答えた。 「それはすごく良い解決策だと思うよ」と私が言うと、息子はそのまま宿題に戻った。 こうした子育てのよくある瞬間を通して、私にとってある重要な真実が具体化されることになった。つまり、ときとして、親ができる最善のことは「何もしない」ということである。
親の過干渉で子供は自信を失う
どんな年代の親も、我が子を初めて抱いたときの気持ちを思い起こせるはずだ。ああ、ここに自分がその人生を託された人間がいるのだ、というあの感覚。そしてどの親も、この新たに始まる魔法のように素晴らしく、かつ恐ろしい試みに備えるための子育ての知恵など一つもないと口を揃えるだろう。 子育ては喜びであり、挑戦であり、ときにはストレスでもある。実際、米国公衆衛生局長官の報告書によれば、子育てによって人はメンタルヘルスを損なう可能性があるという。SNSの複雑さから、子供の安全に対する不安まで、親を危険な状況に追い込む要因はさまざまだ。それに対して同報告書では、保育への投資や連邦政府支給の有給家族休暇など、数々の解決策を提案している。 米国の多くの親たちが、さらなるサポートを切実に必要としていることは間違いない。だが公衆衛生局長官は、どんな親でも自分でコントロール可能なある重要な戦略を忘れている。 それは、自分自身の姿をよく見ることだ。もし私たちの子育て方法が、子供たちにとっても、私たちにとっても、生きることをつらくしてしまっているとしたら? もし、なるべく何もしないことで、お互いに良い結果をもたらすことができるとしたらどうだろう? 30年間、学校現場で働いてきた私は、教育者や子供たちと関わる何千という親の姿を見てきた。そして多くの場合、親が過剰に機能しすぎて過干渉になることで、子供が苦労や我慢を通して得られるはずの自信を奪い、その過程で自分たちも疲弊するのを目の当たりにしてきた。 この現象は私が仕事を始めた当初からずっと見られたものだが、近年より深刻になっている。多くの米国人はいま、現代の若者たちの暮らしは親の世代よりも悪くなると考えているからだ。大学進学から就職、住居に至るまで、少ない資源をめぐる競争が激化しており、親たちは何とかして自分の子供にその競争に勝ってほしいと躍起になっている。