BTS・RMの「チームプレイ」を考察、韓国のオルタナティブな才能がソロ傑作に集った意義
jclef, gim jonny
さらにもう一人、本作での「声」での貢献という意味で欠かせないのがオルタナティブR&Bミュージシャン、jclef(ジェイクレフ)だ。本作のタイトル曲「LOST!」ではイントロから聞こえてくるJclefのか弱く、柔らかい発声のボーカルが、バックボーカルと呼ぶには惜しいくらいの存在感を放っているし、RMのリズミカルに強く吐かれる声とのギャップも魅力になっている。また「LOST!」はJclef以外にも、キム・ハンジュ、Nancy Boy、Marldn、Unsinkable、Qim Isleと多くのミュージシャンがバックボーカルとして、多層的な歌声を作っており、ボーカル面の実験性が一番色濃い一曲だ。 またjclefの昨年発表したEP 『O, Pruned!』を共作したプロデューサー、gim jonnyも本作に参加している。 『O, Pruned!』は全曲jclefのボーカルとgim jonnyの繊細なギターのみで作られたミニマムな作品で、特に2人の制作中に育まれた友情を歌った温かなバラード「jonny’s sofa」が素晴らしかったが、gim jonnyが作曲とギター演奏などで関わった 「Around the world in a day with Moses Sumney」は 『O, Pruned!』のアプローチの延長にあるような一曲とも言えそうだ。
Lee Taehoon (Cadejo)
本作『Right Place, Wrong Person』が贅沢なのは、ソングライターやプロデューサー、ボーカルだけでなく、楽器を演奏するプレイヤーも、韓国アンダーグラウンド・シーンから実力者を招集していることだ。ここからは印象的な3人を紹介しよう。まずは3月にも来日公演を行った3人組ジャム・バンド、Cadejoのギタリスト、イ・テフンだ。2曲目の「Nuts」ではRMの「I could make this right place for you~」というラップとシンクロするファンキーなベースラインと鋭いギター・ソロを、さらに「Domodachi」でもリズムの揺らぎに応じた同楽器の演奏を披露しているが、それらはまさにブルースやファンク、ソウルを通過した彼の普段のプレイに通ずるものがある。