BTS・RMの「チームプレイ」を考察、韓国のオルタナティブな才能がソロ傑作に集った意義
Mokyo
本作のソングライティング面での貢献度が大きそうなミュージシャンをもう何組か続けて紹介しよう。まずは、ヒップホップ、R&Bフィールドで活躍し、ソロ・ミュージシャンとしてはもちろん、pH-1、LOCOなど人気ラッパーの楽曲を多数手掛け、プロデューサーとしても絶大な支持を得ているMokyo(モキョ)だ。彼は暗く叙情的なムードのトラック(Mokyoの「uleum」やBeenzinoに提供した「Camp」を聴いてほしい)から、pH-1やLocoのようなシンギング・ラッパーにフィットした聞き心地のよいヒップホップ・トラックまで、器用に幅広く作曲している。そんなMokyoは本作で5曲に作曲、編曲などで参加しているが、本稿執筆時点で彼が作曲した部分が明確に明かされているのが、RMのリズミカルにスピットするラップとの相性が抜群な「Groin」のトラックだ。多数の楽曲に参加しているだけに、様々な貢献度が見つけられそうなMokyoだが、今までのRMの作品とも異なるオルタナティブな作風の本作の中で、彼のそもそものアイデンティティである 「ラップ・モンスター」を引き出したことは、重要そうだ。
Kim Hanjoo (Silica Gel)
そして、先述の「Groin」でシンセサイザーと、Mokyoのビートの上でのベースのリフレイン演奏をしているのが、5月には4,000人規模のアリーナを3日間即完させ、今年の韓国大衆音楽賞では「今年のミュージシャン」賞を受賞するなど、今韓国の音楽シーンで最もホットなバンド、Silica Gelでボーカル、ギター、鍵盤を担当するキム・ハンジュだ。彼は最近ではSilica Gelでの活動以外にもKim Doeonとコラボした電子音楽のライブ活動や、ボーカルとしての他ミュージシャンへの客演参加など幅広い活動を行っている。「Groin」のシンプルなベースライン自体はSilica Gelの楽曲も想起させるが、彼らの音楽性からは想像もつかないヒップホップ・ビートとの組合せは、まさにこのアルバムならではだ。 また彼は「自分の声は楽器の一つ」というモットーの持ち主で、シリカゲルでも他のミュージシャンへの客演参加時でも、自らの声をロボ声に変調させながら歌うことが多い「声」への探求心が強いミュージシャンだ。キム・ハンジュが本作で作曲、楽器の演奏だけでなく、バックボーカルでも複数の楽曲に参加していることを見ると、RMはそうしたキム・ハンジュの「声」の表現方法にも興味を持っていたのではないかと想像したくなる。彼が所属するSilica Gelは本作収録の「LOST!」を彼ららしくサイケデリックにカバーした動画を公開しているが、キム・ハンジュのボーカル・アレンジにも注目してほしい。